
閉店時の“真のコスト”とは?
昨今のインフレを考えると、時に店舗を戦略的に撤退することも検討の余地があるかもしれません。それでも店舗を閉店する際、「内装や設備の処分費用は仕方ない」とお考えになっていませんか?その認識は“真のコスト”を見誤っているかもしれません。インフレは廃棄・内装撤去には想像以上の費用にも重くのしかかってきています。
例えば飲食店を退去する際の原状回復費用は、完全にスケルトンに戻す場合、1坪あたり5万円程度が相場とされています。ラーメン店や焼肉店のような重飲食では、1坪あたり10万円にもなることがあります 。となると20坪の飲食店の場合、退去する際に100万円から200万円程度かかるということになります。商売を始める時に、撤退するコストを考えている方はほとんどいないのではないでしょうか。しかし現実問題、撤退のときにもコストはかかるものなのです。
一方で、大家さんサイドにもテナント撤退時特有のリスクがあります。例えばテナントの商売が厳しかったために、家賃が滞っていた場合。敷金は全てその補填に充て、結果「原状回復ができませんでした」でテナントがどこかに行ってしまうリスク、ないとは言えません。連帯保証人?追いかけるのが結構大変です(実体験)。連帯保証人は大抵、非常に近しい親族の方ですからね。ということで、良い方法を探す必要が出てくることがあります。なお、そもそもテナント商売が厳しくならないようにという観点からは下記の記事も参考になります。
居抜き譲渡の3大メリット
こうした閉店時の“真のコスト”を大幅に削減し、さらには収益を生み出す可能性を秘めているのが「居抜き譲渡」です。一般的に居抜き譲渡には、主に以下の3つのメリットがあります。
初期投資・内装コストの大幅削減
居抜き譲渡は、設備購入費や内装工事費を大幅に節約できるという点で、新規開業するテナントにとって大きな魅力となります 。これは、閉店するオーナー側から見れば、原状回復にかかる解体工事費用を大幅に削減できることを意味します。
空室期間短縮による機会損失の軽減
居抜き物件は、内装や設備が残っているため、次のテナントがすぐに営業を開始できる可能性が高く、空室期間の短縮に貢献します。これにより、オーナーは家賃収入の機会損失を最小限に抑えることができます。
譲渡価格回収によるキャッシュバック
店舗の内装や設備を資産として次のテナントに売却することで、オーナーは譲渡価格を回収し、キャッシュバックを得ることができます。
業種別・譲渡価値チェックポイント

さて居抜き譲渡の価値は、業種によって大きく異なります。ご自身の店舗の業種に合わせて、特に価値のある設備や什器を把握しておくことが重要です。
飲食:厨房機器・排気設備の中古相場
飲食店の場合、厨房機器や排気設備が譲渡価値に大きく影響します。特に焼肉店や中華料理店など、特殊な排気設備や大型厨房機器がある店舗は、300万円以上の譲渡額になる事例も多数あります。現在のところ、弊社の周りでは飲食店の居抜き譲渡額は100万円から300万円が多いです。大型設備は高額買取の要因となります。
小売:什器・ショーケースの譲渡
小売店では、内装デザインに合わせた什器やショーケース、照明器具などが譲渡価値を高める要素となります。これらが次のテナントの業種に合致すれば、高額での譲渡も期待できます。
サロン/クリニック:チェア・洗面設備のリユース相場
美容室やクリニックでは、施術用のチェアや洗面設備、受付カウンターなどが再利用可能な場合、譲渡価値が高まります。小規模美容室(10〜15坪)の居抜き譲渡額の相場は約100万円から250万円で、床面積が広く充実した設備を持つ店舗ほど高値で推移する傾向があります。私どもでも理美容室の物件(というかほぼM&A)のお取り扱いをさせていただいたことがありますが、やはりこだわりの内装が高額でした。また珍しい(?)案件でいえば、産婦人科の物件を取り扱わせていただいたことがありましたが、分娩台が結構な高値で譲渡された事例を拝見したことがあります。
その他サービス:オフィス家具の市場
その他サービス店舗やオフィスの場合、状態の良いオフィス家具や間仕切り、照明器具などが譲渡対象となります。これらも中古市場で需要があり、廃棄コスト削減と譲渡益の獲得に貢献します。
オーナーが取るべき3ステップ
居抜き譲渡を成功させるために、オーナーが取るべきステップは以下の通りです。
- 資産リスト化(写真+仕様書)
- 店舗内の全ての造作物、設備、什器などをリストアップし、それぞれについて詳細な写真と仕様書を作成します。特に、年式、メーカー、型番、購入価格、メンテナンス履歴などを明確に記録しておくことが重要です。これにより、正確な査定とスムーズな引き渡しが可能になります。
- 査定依頼
- 作成した資産リストを基に、居抜き譲渡専門業者に査定を依頼します。複数の業者に査定を依頼し、比較検討することをおすすめします。経験則ですが「一括査定」みたいなのはオススメしません。理由としては同じグループで査定を出しているだけのことが多いからです。
- 譲渡条件調整(価格交渉と契約特約ポイント)
- 査定額を参考に、買い手候補との間で譲渡価格の交渉を行います。また、契約書には、造作物の範囲、引き渡し日、残置物の扱い、原状回復義務の範囲など、具体的な特約を明記することが重要です。
トラブル回避の契約条項チェックリスト
居抜き譲渡はメリットが大きい反面、契約上のトラブルも発生しやすい取引です。よくあるのは「金がなくてメンテさぼっていたせいで、ちゃんと動かなかった(類似例→温まらない、冷えない、上がらない、下がらないetc…)」というパターンです。以下の点をチェックし、トラブルを未然に防ぎましょう。
- 同意書明文化: 造作物の所有権や原状回復義務の範囲について、売主と買主、そして貸主の三者間で事前に十分に確認し、書面に明文化することが不可欠です。例えば造作が建物と付合してしまっている場合、その所有権の範囲の判定が微妙になります(民法242条~)。テナントとしてどう思っているかどうかではなく、法的に大家の所有物になっているものを承諾なく売却してしまうとトラブルの元になりかねません。①賃貸借契約書の文言をよく読んだうえで、②事前に大家さんサイドに確認し、③合意内容を文書化することがとても重要です。
- 保証会社対応: 賃貸借契約に保証会社が関与している場合、居抜き譲渡が保証内容に影響を与える可能性がないか、事前に保証会社に確認しておくことが重要です。必ず、事前に担当不動産会社にお問い合わせになることをお勧めします。
成功事例3選
飲食店オーナーA:300万円回収
中央線沿線のある駅の近くでラーメン店を経営していたA様は、体調不良のため閉店を決意されました。内装や厨房設備が比較的新しく、人気の立地であったため、居抜き譲渡を依頼してくださいました。結果、当初の想定を上回る300万円で設備や内装を譲渡でき、解体費用をかけずに閉店することができました。
美容サロンB:解体費用ゼロ実現
多摩地域のある街で理容室を運営していたB様は、とある外的要因で閉店せざるを得ない状況になってしまいました。契約ではスケルトン状態での返却義務だったため悩んでおられました。しかし、弊社のサポートで店舗を引き継いでくださる方が見つかり、解体費用を一切かけずに、むしろ譲渡益を得て事業譲渡することができました。
まとめ&無料相談への誘導
店舗の閉店は、新たなスタートでもあります。居抜き譲渡は、単なる店舗の終わりではありません。むしろ“価値”を最大限に引き出し、次のステップへと繋げる賢い選択ともなり得ます。廃棄コストや空室リスクを最小限に抑え、さらには譲渡益を得ることで、金銭的な負担を軽減し、精神的なゆとりを持って閉店プロセスを進めることができます。
弊社でもご相談を受けることが可能ですので、気になった方は下記からどうぞ。
