
八王子市・日野市でロードサイドの貸店舗・貸倉庫・事務所といった事業用不動産を所有するオーナーの皆様、最近、物件の空室が長期化したり、賃料が伸び悩んだりしていませんか? かつては安定した需要があったロードサイド物件も、時代の変化とともにその価値を見直す時期に来ています。データに基づいた適切な戦略なしに、漫然と募集を続けても状況は改善しません。本記事では、最新の交通量データと具体的なシミュレーションを用いて、皆様の物件が持つ真のポテンシャルを最大限に引き出し、空室を解消し、賃料を適正化するための実践的な戦略をデータドリブンな視点から徹底解説します。また個別の地域については下記の記事も参考にどうぞ。
目次
- 調査データの出典と信頼性
- 交通量ランキング TOP10(24h 台数)
- 旅行速度が “TOP10 一般道路” にもたらす3つの実務インパクト
- 空室・賃料アップ シミュレーション方法
- オーナー必見!賃料改定・テナント付け 5 ステップ
- FAQ(よくあるご質問)
- まとめ
調査データの出典と信頼性
本記事でご紹介する交通量データは、《令和3年度 全国道路・街路交通情勢調査一般交通量調査結果》を参照しています。これは全国の道路における交通量を網羅的に調査したもので、公的な信頼性の高いデータです。私たち楽府株式会社は、この客観的なデータを基に、八王子市・日野市におけるロードサイド物件の価値を多角的に分析し、オーナー様の資産価値向上に貢献します。
交通量ランキング TOP10(24h 台数)
下記は八王子市内の主要ロードサイドにおける24時間あたりの交通量ランキングTOP10です。このデータは、単なる車の通行量だけでなく、物件前の「潜在的な顧客の目」の量を示す重要な指標となります。
順位 | 路線 / 通称 | 観測地点(住所) | 合計台数(台/日) | 内訳(小型+大型) |
---|---|---|---|---|
1 | 国道20号 甲州街道 | 明神町4-2-11(地点17090) | 29,614 | 25,637 + 3,977 |
2 | 国道20号 甲州街道 | 大和田町2-3-7(地点17080) | 29,495 | 25,810 + 3,685 |
3 | 国道16号 東京環状 | 尾崎町49-6(地点15220) | 21,888 | 16,826 + 5,062 |
4 | 国道16号 東京環状 | 暁町3-11(地点15210) | 20,212 | 18,549 + 1,663 |
5 | 国道20号 甲州街道 | 千人町3-3-6(地点17100) | 18,279 | 13,844 + 4,435 |
6 | 国道16号 八王子BP | 鑓水1405(地点15080) | 17,135 | 14,485 + 2,650 |
7 | 国道16号 新奥多摩街道 | 北野町549(地点15130) | 16,376† | 14,767 + 1,609 |
8 | 国道16号 | 片倉町1404-301(地点15190) | 15,808 | 10,759 + 5,049 |
9 | 国道16号 八王子BP | 打越町1255(地点15100) | 11,312 | 9,997 + 1,315 |
10 | 国道20号 八王子南BP | 大船町(地点17130) | 8,046 | 7,378 + 668 |
※注:北野町549(地点15130)については大型車 12 h 値(1,609 台)しか公表されていないため、そのまま加算しています。実際の 24 h 合計はやや多い可能性があります。
旅行速度が “TOP10 一般道路” にもたらす3つの実務インパクト
視認性と衝動来店率

ところで、データにある「旅行速度」(上記画像赤丸)ですが、これが低いほど看板に接触する時間が長くなり、「認知 ▶ 判断 ▶ 立寄り」 までの余裕が生まれます。
例えば信号待ち渋滞が常態化しているようなエリアは、実測来店率が周辺平均高くなりがちです。これはつまり、旅行速度によってその土地が何に向いているのかが変わることを意味しています。と同時に「なんとなく」で賃貸募集をかけるのではなく、数字の根拠に基づいた客付け活動を行うことが、賃貸経営の安定化に向けては大切なことが理解できるのではないでしょうか。下記をご覧いただくと分かりますが、具体的には、低速エリアは広告効果による集客力、中速エリアは配送効率による運営コスト削減を賃料根拠として差別化を図ることが王道となります。
スピードの出る道路の横の立地はダメなのか
そして旅行速度を元にした進入・退出のしやすさをまとめると一般的には下記のようになります。速度によって不動産のオーナー(とテナント)がとるべき対策が変わります。よく「私の土地の道路は、車がガンガンスピードを出すからダメだー!」と嘆く声を聞きますが、何もしなければ確かにそうなのかもしれませんが、例えば300メートル手前に看板の用地を確保する、集客用の店舗ではなく物流の中間拠点テナントを狙うなど、何らかの対策を立てるという一手間で大きく変わる可能性があるということです。
旅行速度帯 | 入庫難易度 | 想定課題 | オーナー対策 |
---|---|---|---|
≤ 20 km/h | 低 | 渋滞列の後続車に配慮 | 右折ポケット・誘導サイン |
20–40 km/h | 中 | 判断時間が短い | 事前看板300 m+減速帯 |
≥ 40 km/h | 高 | 急減速リスク | 進入口2 レーン化・左折進入誘導 |
賃料アップの示唆(用途別 × 最適速度帯)
また昨今のインフレにより賃料アップが必要な場合もあることでしょう。このような場合でも「なんとなく(経験と勘)」で交渉するのではなく、データドリブンな交渉が必要です。この場合に活用できるのがこの旅行速度データだったりするわけです。
用途 | 適正速度帯 |
---|---|
飲食・小売 | 10–25 km/h |
コンビニ・GS | 15–35 km/h |
倉庫・配送センター | 25–40 km/h |
💡低速エリアは「看板接触=広告価値」で賃料上乗せ。 中速エリアは「配送効率=ランニングコスト減」で交渉するのが有効です。
つまり旅行速度は単なる交通指標ではなく、テナントの業種特性と直結した収益性指標として機能します。オーナーとしては速度帯に応じた適切なテナント誘致戦略により、賃料アップの根拠を明確化できるのです。

TOP3 詳細解説:賃料改定シナリオを例示
ところで交通量の多い地点は、それだけ多くの潜在顧客にアプローチできる可能性を秘めています。ここでは、八王子市内のいくつかの地点に焦点を当て、具体的な賃料改定シナリオを考えてみましょう。
国道20号(日野バイパス)高倉町
八王子市と日野市を結ぶ大動脈であり、広域からの集客が期待できるエリアです。特に日野バイパスは通過交通が多く、物流拠点や大型商業施設、サービス業店舗に適しています。周辺にはご存じオリンパス株式会社やコニカミノルタ株式会社、また少し進むと日野自動車株式会社の大きな敷地が存在します。
賃料改定シナリオ例: 例えば、このエリアで300坪の貸倉庫を所有し、現在坪単価4,000円(月額120万円)で貸し出しているとします。交通量の多さから、配送業者の拠点や、通販事業者の物流倉庫としてのニーズが非常に高いと考えられます。周辺の類似物件や、交通量から算出される物流効率化による経済メリットをテナントに提示することで、坪単価4,200円(月額126万円)への賃料アップ、つまり月額6万円の増収も十分に狙えます。
国道16号(八王子バイパス)片倉町
多摩地域を南北に縦断する国道16号は、八王子ICから相模原方面の工業団地への動脈であり、広域からのアクセスがあります。また大規模住宅街に近接しているため、多様な業種に対応可能です。特に、八王子バイパス沿いは視認性が高く、看板効果も絶大です。
賃料改定シナリオ例: このエリアで100坪の貸店舗を所有し、現在坪単価8,000円(月額80万円)で貸し出している場合。交通量が多く、来店型ビジネスには非常に有利な立地です。例えば、ロードサイド店舗としての需要が高いカー用品店、飲食店、ショールームなどに対し、交通量データと想定インプレッション数を提示し、坪単価8,500円(月額85万円)への賃料交渉を行うことで、月額5万円の賃料アップが実現する可能性があります。高い集客効果を根拠に、賃料の正当性を説明できます。
国道20号(甲州街道)八木町
八王子市の中心部に近く、地域住民の生活導線にもなっている甲州街道は、地域密着型店舗やサービス業に強いエリアです。特に、この地点は八王子駅や市役所、西八王子方面とどの方面へのアクセスも良好で、安定した集客が見込めます。
賃料改定シナリオ例: このエリアで50坪の貸事務所を所有し、現在坪単価7,000円(月額35万円)で貸し出していると仮定します。交通量の多さから、法人向けのサービス業や、地域住民をターゲットとした学習塾、医療機関などの需要が見込めます。周辺の類似物件と比較しつつ、この交通量のメリットを強調することで、坪単価7,500円(月額37.5万円)への賃料改定、つまり月額2.5万円の増収を目指せるでしょう。
空室・賃料アップ シミュレーション方法
上述のように、データに基づいた空室対策や賃料アップ戦略を進めるためには、具体的なシミュレーションが不可欠です。ここでは、交通量データを活用した2つのシミュレーション方法をご紹介します。
① 交通量×来店率→売上→適正賃料逆算式
ロードサイド物件の最大の強みは、その立地が生み出す「集客力」です。この集客力を数値化し、そこから適正な賃料を導き出すことができます。
ステップ1:交通量から潜在顧客数を算出
- 交通量(24h台数):前述のランキングデータを参照
- 視認率:物件の視認性によって変動します。一般的にロードサイド物件では5%〜15%程度を目安にしますが、看板の大きさやデザイン、周辺環境によって大きく異なります。
- 来店率:視認した潜在顧客のうち、実際に来店する割合。業種やターゲット層、提供する商品・サービスによって大きく変動しますが、0.1%〜1%程度を目安とします。
計算式: 潜在顧客数 = 24h交通量 × 視認率 × 来店率
ステップ2:想定売上を算出
- 客単価:来店した顧客が1回あたりに使う平均金額。
- 来店頻度:テナントの業種や顧客層によって異なりますが、サービス業や飲食店であれば月数回、物販であれば月1回など。
計算式: 月間想定売上 = 潜在顧客数 × 客単価 × 来店頻度(調整)
ステップ3:適正賃料を逆算 テナントが無理なく経営を続けられる賃料は、一般的に「売上高の10%以内」が目安とされています(業種により変動)。
計算式: 適正月額賃料 = 月間想定売上 × 0.10
テナントがどのくらいの売上を見込めるのか、そしてその売上に対してどの程度の賃料が適正なのかを論理的に説明する強力な根拠となります。現在の賃料がこの適正賃料よりも低い場合は、賃料アップの交渉材料として活用できます。
② 看板露出価値を CPM 換算し「広告収入の上乗せ」提案
ロードサイド物件のもう一つの大きな価値は、「看板」による広告効果です。通過する車両からの視認性を広告媒体としての価値に換算することで、賃料への上乗せを提案できます。
CPM(Cost Per Mille)とは? CPMとは「Cost Per Mille」の略で、広告が1,000回表示されるあたりの費用を示す指標です。ウェブ広告の世界では一般的な概念ですが、これをロードサイド看板にも応用できます。
計算式: 月間想定看板インプレッション = 24h交通量 × 30日 × 視認率
看板露出価値(月額) = (月間想定看板インプレッション / 1,000) × 広告単価(CPM)
広告単価(CPM)の目安: 屋外広告のCPMは、場所や媒体によって大きく異なりますが、交通量の多いロードサイドであれば、1,000インプレッションあたり300~1,100円程度で設定することが多いようです。広告代理店に問い合わせるとその物件の持つ正確なポテンシャルを教えてもらえます。
このように看板に関しても勘ではなくデータに基づいて論理的に求める方が、お互いにとって納得いく結果になります。看板露出はテナントが別途広告費をかけることなく得られる「広告効果」であり、したがってこの分の価値を賃料に上乗せして提案することが可能です。例えば、現在の賃料が適正水準であっても、この「広告収入上乗せ」という切り口で、実質的な賃料アップを実現できる場合があります。
オーナー必見!賃料改定・テナント付け 5 ステップ
「データがあるのは分かったけれど、具体的にどうすればいいの?」というオーナー様のために、私たちが実践している賃料改定・テナント付けの5ステップをご紹介します。
- 現状分析と目標設定: まずは物件の現在の状況(空室期間、現状賃料、周辺相場、競合物件の状況など)を詳細に把握します。そして、「いつまでに」「いくらの賃料で」「どのようなテナントに入居してほしいか」という具体的な目標を設定します。この際、単なる希望的観測ではなく、交通量データや周辺環境を加味した現実的な目標を立てることが重要です。
- 市場調査と競合分析: 周辺の類似物件の賃料、募集状況、入居テナントの業種などを徹底的に調査します。特に、今回の記事で紹介した交通量データを活用し、自社物件と競合物件の「潜在的な集客力」を比較分析することで、より客観的な市場価値を把握できます。
- データに基づく適正賃料の算出と戦略立案: 国土交通省の交通量データや周辺の商業施設、人口動態データなどを総合的に分析し、前述の「交通量×来店率→売上→適正賃料逆算式」や「看板露出価値のCPM換算」を用いて、物件の「データに基づいた適正賃料」を算出します。このデータが、賃料交渉の強力な根拠となります。同時に、ターゲットとする業種やテナント層を明確化し、それに合わせた募集戦略を立案します。
- 物件の魅力最大化と募集活動: 算出された適正賃料に見合うよう、必要に応じて物件の修繕やリノベーションを検討します。特に、看板スペースの整備や駐車場の確保など、ロードサイド物件ならではの「集客力」を高める工夫は効果的です。その後、ターゲティングしたテナント層に響くような広告を作成し、多角的なチャネルで募集活動を展開します。
- 交渉と成約、そしてその後のフォロー: 興味を持ったテナント候補者に対しては、データに基づいたシミュレーション結果を提示し、物件のポテンシャルを具体的に説明します。単なる賃料交渉ではなく、テナントの事業計画に寄与する「価値」として賃料を位置づけることが重要です。成約後も、テナントの事業が安定し、賃料が継続して支払われるよう、定期的なコミュニケーションやサポートを行うことで、オーナー様の長期的な収益を確保します。
賃料設定の考え方については、以下の記事もぜひ参考にしてください。
FAQ(よくあるご質問)

オーナー様からよくいただくご質問にお答えします。
Q1: 交通量データは賃料査定に直結しますか?
A1: はい、交通量データは賃料査定において非常に重要な要素の一つです。特にロードサイド物件においては、その物件がどれだけの潜在顧客にアプローチできるかを示す直接的な指標となります。交通量が多いほど集客力が高まり、テナントの売上向上に貢献する可能性が高まるため、高めの賃料設定の根拠となり得ます。ただし、交通量だけでなく、視認性、周辺環境、競合状況、物件の設備なども総合的に考慮して適正賃料を算出します。
Q2: 24h交通量と昼間交通量、どちらを重視すべきですか?
A2: テナントの業種によって重視すべき交通量は異なります。飲食店や小売店など、昼間や夕方の集客がメインとなる業種であれば、日中の交通量をより重視します。一方で、物流倉庫や一部の製造業など、24時間稼働を前提とする業種や、看板広告効果を重視する場合は、24時間交通量が重要になります。ご自身の物件にどのようなテナントを誘致したいかによって、データの見方を使い分けることが肝要です。
Q3: 古い物件でも交通量データで賃料アップは可能ですか?
A3: 可能です。物件が古くても、立地が良い(交通量が多い)という根本的な強みは変わりません。データに基づいた高い集客力や広告効果を論理的に説明することで、古い物件であっても賃料アップの交渉材料となります。もちろん、内装や設備のリノベーションを検討することで、より魅力を高め、データと相まって賃料アップの確度を上げることができます。私たちは、古い物件でもその価値を最大限に引き出すための具体的な提案が可能です。
Q4: ロードサイド物件の空室期間が長いのですが、どうすればいいですか?
A4: 空室期間が長い場合、まずは現状の賃料設定と募集戦略が市場に合致しているかを徹底的に見直す必要があります。本記事で解説した交通量データに基づく適正賃料の再算出、ターゲットとするテナント層の再設定、そして物件の魅力向上策(リノベーション、看板設置など)を総合的に検討することが重要です。私たちにご相談いただければ、現状を詳細に分析し、データに基づいた最適な空室対策プランをご提案させていただきます。
Q5: 中央道IC付近の物件は交通量データ以外にどのような強みがありますか?
A5: 中央自動車道のインターチェンジ(IC)付近の物件は、交通量データに加えて、広域からのアクセス性に優れているという非常に大きな強みがあります。物流拠点、広域集客型店舗(アウトレット、大型アミューズメント施設など)、トラックターミナル、そして企業の配送センターなどに非常に適しています。高速道路からの視認性も高く、広範囲への広告効果も期待できます。交通量データと合わせて、このような広域的なアクセスメリットをテナントに提示することで、物件の価値をさらに高めることができます。
まとめ
八王子市・日野市のロードサイド物件の価値は、単なる坪数や築年数だけでは測れません。今回ご紹介した国土交通省の交通量データや、それを活用したシミュレーションは、皆様の物件が持つ真のポテンシャルを明らかにし、空室解消と賃料アップを実現するための強力な武器となります。データの力で、物件の隠れた価値を最大限に引き出し、次のステップへ踏み出しましょう。
私たちとデータドリブンなアプローチで、不動産を安定経営しましょう。お悩みがございましたら、どうぞお気軽に私たち「楽府株式会社」のLINEにご登録ください。
