
目次
- 1. 左入町の用途地域・ゾーニング上の強み:物流施設に最適な「準工業地域」
- 2. 優れた交通アクセスと物流効率:主要幹線道路へのダイレクトアクセスが魅力
- 3. 税制優遇・奨励金の活用メリット:コスト競争力を高める八王子市の支援制度
- 4. 整備済みインフラと労働力確保環境:事業運営を支える基盤
- 5. 今後の発展可能性と需要動向:成長し続ける物流ニーズに応える戦略的立地
- 6. まとめ
八王子市左入町に不動産を所有しているのであれば、物流拠点として貸し出すのがお勧めです。そもそも事業者にとって物流拠点の立地選定は、事業の効率性と収益性を左右する重要な経営判断です。特に、都心近郊で効率的な配送ネットワークを構築したいのであれば、土地費用や交通アクセス、税制優遇といったメリット抜きでは語れません。ですから不動産所有者としては、そのメリットがここ左入町にありますよということを主張していくことで有利に戦えます。
本記事では、東京都八王子市左入町に焦点を当て、物流施設用地として賃貸する際の具体的なメリットを、宅建士の視点から詳しく解説します。左入町がなぜ物流拠点として注目されるのか、その理由を明らかにするとともに、企業立地奨励金などの税制優遇制度についても分かりやすくご紹介します。また八王子市全体のロードサイド事情については下記記事も参考になります。
1. 左入町の用途地域・ゾーニング上の強み:物流施設に最適な「準工業地域」

上の図は東京都都市整備局ホームページで用途地域を見たもの(2025年6月3日現在)です。左入町の一部は紫色の「準工業地域」に指定されています。 この用途地域は、主に環境悪化の恐れのない工業の利便を図る地域であり、一定の住居や商業施設も共存できる柔軟性を持っています。ではこれがどのようなメリットをもたらすのでしょうか。
物流施設にとっての具体的なメリット
- 騒音・振動規制の緩和: 工業地域に準じた規制基準となるため、24時間稼働も視野に入れた物流施設の運営において、周辺環境への配慮と事業継続性の両立が図りやすくなります。
- 大型トラックの出入り: 準工業地域は、大型車両の通行を前提とした道路整備が進んでいる場合が多く、物流施設に不可欠な大型トラックのスムーズな出入りが可能です。これにより、荷物の積み下ろし効率の向上や、ドライバーの負担軽減にも繋がります。
- 倉庫業や配送センターの建設に適した環境: 上記の理由から、倉庫、配送センター、トラックターミナルといった物流関連施設の建設に非常に適した環境と言えます。
用途地域が設定されているということから「ハマり易い」、つまり「物流拠点等として貸し出すと安定経営できる確率がとても上がる。」というのは自明の理ですが、メリットはそれだけではありません(後述)。
2. 優れた交通アクセスと物流効率:主要幹線道路へのダイレクトアクセスが魅力
もう一つ物流において最も重要な要素の一つが、交通アクセスの良さです。左入町は、ご存じのように中央道や圏央道、そして国道16号や国道20号等の主要幹線道路へのアクセスに優れており、広域配送ネットワークの構築に大きく貢献します。よって都心方面、埼玉方面、神奈川方面へのアクセスが非常にスムーズです。 特に、八王子バイパスを利用することで、市街地の混雑を避けた効率的な輸送が可能です。
具体的な交通量データ(令和3年 国土交通省関東地方整備局調査)
- 観測地点15130(新奥多摩街道): 12時間あたり総交通量 14,767台、うち大型車 1,609台
- 観測地点15220: 12時間あたり総交通量 21,888台、うち大型車 5,062台
左入町の直接のデータはないのですが、左入町に隣接し、左入町への車の流入経路となるデータを分析すると、左入町が物流トラックの通行量が非常に多い重要な輸送路であることを明確に示しています。ということで左入町は、この活発な物流ルート上に位置することで、集荷・配送の両面において高い効率性を実現できます。
3. 税制優遇・奨励金の活用メリット:コスト競争力を高める八王子市の支援制度
そしてこれが大きなメリットなのですが、八王子市では、企業の立地を促進し、地域産業の振興と雇用機会の拡大を図るため、手厚い企業立地支援制度を設けています。物流施設用地として土地を賃貸する場合、貸主である不動産オーナー様が活用できる可能性のある奨励金制度をご紹介します。
(1)貸し施設設置奨励金
八王子市のこちらのPDFファイルをご覧いただきたいのですが、不動産所有者が活用できる奨励金として例えば「貸し施設設置奨励金」というものが存在します。
- 制度概要: 新たに施設を設置(建築・購入・賃借)し、物流系産業の事業者に賃貸した場合、貸し施設設置者(不動産オーナー様)に対し、固定資産税・都市計画税相当額が3年間キャッシュバックされます。
- 対象業種: 物流系産業(物資の保管、物流加工、仕分け、発送などを主たる業務とする施設)
- 主な要件(物流系産業の場合)
- 企業立地促進地域内であること(左入町の一部は該当。詳細は八王子市にご確認ください)。
- 投下固定資産評価額:
- A地区:土地・家屋・償却資産の合計で1億円以上
- B地区:土地・家屋・償却資産の合計で5千万円以上
- ポイント: 賃貸先が物流系事業者であることが条件となります。この制度を活用することで、初期投資の負担を軽減し、収益性を高めることが期待できますね。何も考えずに不動産を貸し出すのとは雲泥の差がでてくるわけです。
(2)産業系用地確保奨励金
- 制度概要: 企業立地促進地域内の1,000㎡以上の土地を、物流系産業の事業者または貸し施設設置者に譲渡した場合、土地の譲渡者に対し、固定資産税・都市計画税相当額が1年度分キャッシュバックされます。
- ポイント: 土地を賃貸するのではなく、売却する場合に適用される可能性があります。賃貸活用を主とする場合は、上記の「貸し施設設置奨励金」が優先的に検討されるでしょう。日々の業務の中でお客様と接していて、この奨励金についてご存じの方とお会いしたことがありませんが、八王子市市内の準工業地域に存在する不動産は、「不動産屋が買いたいと言ってきたから」などの理由で単純に売却するのは非常にもったいないのです。
(3)各種加算金制度
上記の奨励金に加え、さらに条件を満たすことで支給される加算金制度も用意されています。
- 特定産業加算金制度: 物流施設が特定産業(医療・ヘルスケア、半導体・デジタル、環境関連産業など)の用に供される場合、加算金が交付される可能性があります。
- 市内雇用促進加算金制度: 新規雇用者のうち一定割合以上が八王子市内居住者である場合、加算金が交付されます。
- 市内建設業者活用加算金制度: 工場等の新設・拡張の際に八王子市内の建設業者を活用した場合、加算金が交付されます。
これらの奨励金・加算金制度を最大限に活用することで、土地活用のコストメリットを大幅に高めることができます。制度の詳細や適用条件については、必ず八王子市産業振興部産業振興推進課 企業立地促進担当にご確認ください。
4. 整備済みインフラと労働力確保環境:事業運営を支える基盤

(1)整備されたインフラ
ありがたいことに、八王子市左入町を含む準工業地域では、事業活動に必要なインフラが整備されています。
- 電力・上下水道: 工業活動にも対応可能な電力供給、安定した上下水道の利用が期待できます。具体的な電力容量や引き込み条件については、個別の物件や計画に応じて東京電力等にご確認ください。
- 道路網: 前述の通り、国道16号をはじめとする幹線道路網が整備されており、大型車両の通行もスムーズです。敷地内のトラックバースや待機スペースの確保も、物流施設の設計において重要なポイントとなります。
(2)豊富な労働力と通勤アクセス
八王子市は57万人以上の人口を抱える多摩地域の中核都市であり、豊富な労働力供給が期待できます。
- 多様な通勤手段: JR中央線、京王線、横浜線、八高線といった鉄道路線に加え、路線バス網も充実しており、市内および近隣市町村からの通勤者がアクセスしやすい環境です。 これにより、物流施設で必要となる多様な人材(倉庫作業員、ドライバー、事務員など)の確保が比較的容易になります。
- 職住近接: 八王子市は、多摩ニュータウンや八王子みなみ野といった快適な住環境も有しており、「職住近接」を実現しやすい都市です。 従業員の通勤負担軽減は、定着率向上にも繋がり、安定的な事業運営に貢献します。
5. 今後の発展可能性と需要動向:成長し続ける物流ニーズに応える戦略的立地
(1)広域物流ネットワークのハブ機能
左入町は、圏央道や中央道 八王子ICへのアクセスも良好で、これら高速道路網を活用することで、関東一円はもちろんのこと、甲信越地方や東海地方への広域物流ネットワークのハブ拠点としての機能を担うことができます。
(2)EC市場拡大に伴う物流拠点ニーズの増加
近年、EC(電子商取引)市場は急速な成長を続けており、これに伴い、都心近郊における中小規模の物流拠点(ラストワンマイル配送拠点、地域配送センターなど)のニーズがますます高まっています。特に、即日配送や時間指定配送といったサービスの高度化に対応するためには、消費地に近い戦略的な立地が不可欠です。左入町は、このような市場の需要に応えるポテンシャルを十分に有しています。
(3)周辺の開発計画と産業集積
八王子市では、産業交流拠点の整備計画が進められているほか、既存の工業団地や産業集積エリアとの連携も期待されます。2025年6月現在、左入町周辺は開発計画が進行中であり、また商業施設もオープンします。これら動向については、八王子市の都市計画情報などを確認することで、将来的なエリアの発展性を見通すことができます。
6. まとめ
ということで、八王子市左入町の土地を物流施設用地として賃貸する主なメリットをここまでまとめてきました。そもそも交通アクセスの利便性が高いことから、行政は用途地域を準工業に定めており、なおかつ各種の税制優遇や奨励金を出しているのです。不動産所有者としてはあるいは、不動産投資家としては、これらの制度を利用して、地域に貢献することが最も有効な手段となり得ます。
八王子市左入町にご縁のある方は是非、これらのメリットを踏まえた不動産の活用法をご検討になられることをお勧めいたします。また具体的な客付けに当たってのご相談は弊社までお気軽にお寄せください。
