不動産

政府統計で読み解く八王子市石川町(西)の不動産有効活用ガイド|低層住宅・準工業・工業専用をフル活用

はじめに

 八王子市石川町(西)は多摩地域屈指の「住・工・物流」複合エリアです。特筆すべきは「工業専用地域」が存在すること。半径500メートル以内を分析した政府統計によると人口3,062人・高齢化率25%の住宅地でありながら、経済センサスでは事業所119社・従業員4,918人の産業集積地という二面性を持ちます。本記事では政府統計データを基に現状を分析したうえで、この地域特有の不動産の最適活用アイデアと八王子市の補助金制度を活用した不動産活用(投資)戦略を解説します。ご案内いたしますのは、八王子市の宅建業者である楽府株式会社の宅地建物取引士です。*本記事において「石川町(西)」とは主に、「石川町西交差点」を中心とした下記画像エリアを指しています。なお、前回はお隣の八王子市大和田町を取り上げました。こちらも石川町にとても影響のある地域で、参考になりますので、下記からどうぞ。

石川町の3大用途地域を地図で確認

 いつものことながら、不動産有効活用を検討する際、まず押さえるべきは用途地域の分布です。上記画像は用途地域図です。これによると八王子市石川町は大きく3つのゾーンに分かれています。

 北部の住宅エリアは「第一種低層住居専用地域」(地図上では緑色表示)が主体となり、建ぺい率40%・容積率80%・高さ制限10mの規制下にあります。一方、都道59号沿いは「準工業地域」(紫色表示)として建ぺい率60%・容積率200%・高さ制限なしの比較的自由度の高い活用が可能です。そしてこの準工業地域に囲まれているのが「工業専用地域」(やや灰色がかった水色)です。その大部分が旧ケンウッドエリアですね。住宅建築は不可という制約があります。この明確な用途区分が、石川町特有の多面的土地活用の可能性を生み出しています。

用途地域建ぺい率容積率高さ制限主な用途制限
第一種低層住居専用40%80%10m住宅・兼用住宅のみ
準工業60%200%なし危険・環境悪化工場以外可
工業専用60%200%なし住宅・店舗不可

国勢調査で見る「住む人」――人口・世帯・年齢構成

 石川町の人口動態を詳しく見ると、不動産ニーズの変化が読み取れます。国勢調査2020年版によると、石川町(西)交差点を中心とした1次商圏(500メートル)の人口は3,062人、世帯数は1,348世帯で、1世帯あたり人員は2.27人と東京都平均を下回る少子高齢化の傾向を示しています。

 特に注目すべきは世帯構成の変化です。単身世帯が36.6%(493世帯)を占め、65歳以上人口は25.1%(769人)に達しています。この数字は、従来の核家族向け3LDK・4LDKから、単身者・高齢者向けの住宅需要へのシフトを示唆しています。

 またこの地域の特徴として、在宅勤務の普及により、職住近接のニーズに応えている(応えやすい)というものがあります。つまり、石川町は都心通勤圏でありながら工業地域の要素を併せ持つため、とにかく職住近接をアピールしやすいということです。

年齢層人口構成比特徴的ニーズ
0-14歳367人12.0%子育て支援住宅
15-64歳1,926人62.9%職住近接・リモートワーク
65歳以上769人25.1%バリアフリー・終身住宅

 これらのデータから導出される住宅ニーズは、終身賃貸住宅、バリアフリー対応住宅、在宅ワーク対応の1LDK・2LDKが中心であることが分かります。

経済センサスで見る「働く人」――産業構成・従業員数

 経済センサス2021年調査では、石川町に119事業所・従業員4,918人が集積していることが判明しています。この従業員数は夜間人口3,062人を大きく上回り、石川町が周辺地域からの通勤者を受け入れる「昼間人口>夜間人口」の産業拠点であることを示しています。

 産業構成を詳しく分析すると、製造業が12.6%(620人)、運輸・倉庫業が7.6%(374人)、その他サービス業が69.7%(3,428人)となっています。特に運輸・倉庫業の従業員比率の高さは、国道16・20号、中央・圏央道へのアクセス利便性を活かした物流拠点としての機能を裏付けています。

 この昼夜間人口比率1.61倍という数値は、複合用途開発の大きな可能性を示しています。昼間は事業所・工場として機能し、夜間は従業員向け宿泊施設や会議室として活用する「時間軸を活用した土地利用」が現実的な選択肢となります。

 また製造業と物流業を合わせた比率20.2%は、八王子冷凍倉庫をはじめとする低温物流施設や、製造業向けの部品・原材料保管施設への需要を示唆しています。そもそも冷凍・冷蔵倉庫が不足しているということもあり、特に食品製造業との連携による冷凍・冷蔵倉庫は、投資回収期間の短縮が期待できるかなり有力な選択肢です。

交通・物流インフラ分析

 石川町の不動産有効活用において、交通インフラは最大の競争優位性です。

 特に注目すべきは、湾岸エリアから多摩地域への物流動線です。東京湾岸の大型物流施設から石川町までの所要時間は約60分で、中継拠点としての機能を果たせます。

 そして物流を考えるに当たって重要な、地域外からの労働人口の流入ですが、石川町にはJR北八王子駅が存在しており、多くの通勤客が利用可能。ここからJR八王子駅まで電車で4分、路線バスでは約15分の位置にあり、公共交通による通勤・通学の利便性も確保されています。この「道路・鉄道双方へのアクセス良好」という特徴が、多様な用途での不動産活用を可能にしています。

 ということで、石川町(西)は「住む・創る・運ぶ」がワンストップで完結する極めて稀な街区であるといって良いでしょう。政府統計で裏付けられた人口・産業構造をテコに、用途地域ごとに最適解を張り分けることで、中長期のキャッシュフローと物件価値をブーストできます。

用途地域別「最適活用シナリオ」

 さて、統計データと交通インフラ分析を踏まえ、各用途地域での最適活用シナリオを具体的に検討してみましょう。

用途地域区分活用アイデア統計根拠想定利回り主要補助金
第一種低層住居専用終身セーフティネット戸建賃貸/在宅ワーク対応1LDK高齢25%・単身37%7〜10%居住環境整備補助、住宅確保要配慮者住宅改修補助
準工業地域1Fマイクロ物流+上層賃貸複合/クラフト工房製造+物流24%7〜10%ものづくり企業地域共生推進助成金、アスベスト調査補助
工業専用地域冷凍・定温倉庫/Edgeデータセンター物流従業員比率高9〜11%ものづくり企業地域共生推進助成金

 第一種低層住居専用地域では、高齢化率25%・単身世帯37%という統計を踏まえ、在宅ワーク可+終身賃貸”の戸建リノベが狙い目となりそうです。かつ、将来はセーフティネット住宅へ転換し、出口を複線化することも有効な戦略です。既存戸建ての活用のメリットと集客のコツについて過去記事で書いていますので、ぜひ参考にしてください。

 準工業地域では、1階を小規模物流拠点(ラストワンマイル配送)、2階以上を賃貸住宅とする複合用途開発が理想です。製造業12.6%・物流業7.6%の従業員需要と住宅需要を同時に満たせます。また、小規模な工房として貸し出すと安定経営に繋がりやすくなります。石川町近郊でコーヒーの焙煎や金属加工の工房が既に存在していることをご存じの方もいらっしゃることでしょう。

 工業専用地域では、冷凍・定温倉庫が最有力候補です。食品流通の低温化ニーズと石川町の交通利便性を活かし、長期契約が可能です。また、データセンター需要の高まりを受け、Edgeデータセンターとしての活用も検討価値があります。

エッジデータセンターとは企業や産業の中心地から近い場所で稼働するデータセンター

補助金・助成金の活用フロー

 八王子市の補助金制度を効果的に活用することで、初期投資を大幅に圧縮できます。申請の順序と注意点を整理します。

 まず第一段階として、建物改修前に「アスベスト調査補助」を申請します。上限25万円の補助により、昭和56年以前の建物の安全性確認が可能です。この調査は着工前の必須手続きとなるため、早期申請が重要です。申請の主な要件は、

(1)5年以上除却する予定のないもの
(2)平成元年12月31日までに原則として確認済証が交付されたもの
(3)延べ面積1,000㎡以上または不特定多数の者の利用のある用途(集会所、ホテル、飲食店、店舗など)を含む延べ面積300㎡以上のもの

です。

 第二段階では、用途に応じて改修補助を選択します。住宅用途の場合は「居住環境整備補助」で5~50万円(工事の内容により異なる)、事業用途の場合は「ものづくり企業地域共生推進助成金」で費用の4分の3、上限375万円の補助が受けられます。後者は準工業・工業専用地域での活用に適しています。

 第三段階として、住宅確保要配慮者向け住宅を整備する場合、「セーフティネット住宅登録」により最大450万円/戸の改修補助が追加で受けられます。10年間、高齢者・障害者・子育て世帯等を対象とした住宅として登録することが条件です。

これらの補助金を組み合わせることで、安定的な投資を行いつつ、多大な社会貢献を行うことが可能となります。ただし、各補助金には併用制限があるため、事前に八王子市住宅政策課への相談が必要です。

まとめ・無料相談

 八王子市石川町の不動産有効活用において、最大の強みは「住宅・工業・物流」の三層構造にあります。国勢調査・経済センサスの分析により、単身高齢者向け住宅需要、製造業・物流業の立地需要、そして交通インフラを活かした物流拠点需要が明確に浮かび上がりました。

 用途地域の制約を逆手に取り、それぞれの特性を最大化する活用戦略こそが、石川町での不動産有効活用の鍵となります。第一種低層住居専用地域での職住近接&終身賃貸、準工業地域での複合用途開発、工業専用地域での冷凍倉庫・データセンター開発という選択肢は、いずれも統計データに裏付けられた合理的な投資判断です。

 さらに、八王子市の充実した補助金制度を組み合わせることで、初期投資リスクを大幅に軽減できます。ただし、各補助金には申請時期や併用制限があるため、専門家との事前相談が不可欠です。

無料相談のご案内

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manabito

楽府株式会社 代表取締役/ 宅地建物取引士 / 不動産と文化の融合を目指す不動産会社「楽府株式会社」代表取締役。 その他合格・取得資格は行政書士(未登録)/ITストラテジスト/応用情報技術者/第二種電気工事士/運行管理者(貨物)など。 不動産売却や相続不動産の相談を専門。特に、八王子市・日野市・府中市など多摩地域の不動産に精通。 相続セミナー講師(日野市後援、国分寺市後援、多摩市後援、厚木市後援の相続セミナー実績あり) ブログを通じて、不動産の悩みを抱える皆様に賢明な判断の根拠を提供できるよう努めています。

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