不動産

大船渡市山林火災から学ぶ空き家・未登記不動産の危険性と対策【2025年最新】

火災で焼けた家の前に驚いて立っている人

相続した不動産や空き家を放置していませんか?それは防災上の重大リスクかもしれません。大船渡市の大規模火災事例から学ぶ、空き家・未登記不動産の危険性と対策を楽府株式会社の宅地建物取引士がご紹介します。

目次

大船渡市山林火災の衝撃 — 平成以降最大規模の被害とその教訓

2025年2月26日、岩手県大船渡市で発生した大規模山林火災は、報道によると焼失面積約2,600~2,900ヘクタールに達し、平成以降国内最大規模の火災となりました。この火災による被害は甚大で、住宅210棟が被害を受け、そのうち171棟が全焼。最大で1896世帯4596人に避難指示が出される事態となり、三陸町綾里小路では90歳男性が犠牲となりました。

3月9日に火災は鎮圧され、翌10日には避難指示が全て解除されましたが、被災者にとっての試練はここからが本番です。

全焼家屋の再建にかかる莫大な費用

全焼した家屋の再建には、想像以上の費用がかかります:

  • 解体費用: 坪単価1.5万円~7万円、合計で45万円~700万円
  • 建設費用: 平均して約2,500万円(グレードや地域により変動)
  • 総額: 約2,545万円~3,200万円が必要

これらの費用は火災保険や公的支援でカバーできる部分もありますが、全額が補償されるケースはまれです。特に未登記不動産の場合、火災保険の請求が困難になるケースがあることもあります。もちろん必ずしも全てのケースで請求が不可能になるわけではありません。保険会社との個別の交渉や、相続人全員の同意があれば請求が認められる場合もあります。とはいえきちんと登記を備えておくことは、いざ被災した際の大変な状況の中での大変な手間を考えても、「まだ大丈夫」なうちから、優先的に行っていただきたいことです。次章ではその点について書いていきます。

【緊急警告】未登記不動産がもたらす防災上の致命的問題点

大船渡市の火災現場はもとより、大規模な災害があるたびに浮き彫りになる問題、それは「未登記不動産」の存在が復興の大きな障壁になっているという事実です。相続したままで登記変更をしていない不動産、所有者不明の空き家・空き地が数多く存在し、以下のような深刻な問題を引き起こしています。

1. 火災保険の請求ができず、再建資金が得られない

未登記不動産は所有者証明が困難なため、火災保険の請求手続きが進まないケースが発生します。保険金支払いの遅延は、被災者の生活再建を大きく遅らせる要因となります。

弊社のお客様が経験した事例: お客様が相続した実家が未登記のまま火災に遭い、保険金請求に6ヶ月以上を要しました。その間、仮設住宅での生活を強いられ、精神的・経済的負担が大きくなりました。

2. 復興作業の大幅な遅延と地域全体への影響

未登記不動産が多い地域では、復興作業全体が大幅に遅延します。これは下記のような原因によります。

  • 所有者特定が困難なため、倒壊建物の撤去や用地取得が難航
  • 東日本大震災や能登半島地震でも、相続登記未了の土地が多く、復興事業が大幅に遅れた前例あり
  • 公費解体の進行率が低迷し、地域全体の復興が遅れる悪循環

3. 複雑化する行政手続きと支援金申請の困難さ

未登記不動産では、様々な行政手続きが複雑になります。例えば下記のようなことです。

  • 全ての法定相続人の同意書や印鑑証明が必要となり、手続きが煩雑化
  • 支援金申請やライフライン復旧の手続きが遅延
  • 相続人が多数いる場合や相続人同士の関係が悪い場合、手続きが事実上不可能になることも

4. 私道問題によるインフラ復旧の停滞

被災地域では、日常的に使用している道路が実は「私道」であるケースが少なくありません

  • 未登記の私道では通行・掘削許可が取れず、インフラ復旧が遅延
  • 「誰の土地か分からない」状態では行政も正式な許可を出せない
  • ガス・水道・電気などライフラインの復旧が遅れ、住民の帰宅も遅れる

弊社が経験した事例:これは、被災地域に限らず、弊社が以前お預かりした売却物件でも存在した事例です。被相続人が使用していた道路は、実は公道ではなく私有地を道路として活用していただけで、そこに私設管を通して上水道、下水道を使っていたものの、いざその土地を売る際に、買う方のために改めて通行許可と掘削許可を取らなければならないという状態でした。ところがこの「許可」を誰からもらったらよいかが分からないのです。一応相続人らしき人は判明したのですが、きちんと登記がされていないので、その人に本当に相続権があるのか、その人から許可をもらったところでそれが有効なのかが不明という状況でした。こうなると、実際に売却できるまでには長い時間と労力がかかるのが現実です。

空き家・未登記不動産の放置が招く5つの防災リスク

さて、未登記不動産や空き家を放置することは、火災だけでなく様々な防災リスクを高めます。

1. 火災発生・延焼リスクの増大

空き家は火災発生のリスクが通常の住宅よりも高いことが統計的に明らかになっています:

  • 管理されていない電気配線からの漏電火災のリスク
  • 放火の標的になりやすい(不法侵入者による放火など)
  • 周辺家屋への延焼速度が速い(定期的な換気がなく乾燥状態のため)

2. 地域全体の防災力低下

また空き家や未登記不動産の増加は、地域全体の防災力を大きく低下させます:

  • 災害時の避難経路確保が困難になる
  • 地域の防災訓練や自主防災組織の機能低下
  • 行政の防災計画策定や実施が複雑化

3. 倒壊や飛散物による二次被害

特に古い空き家は、災害時に倒壊や部材の飛散による二次被害のリスクが高まります:

  • 地震時の倒壊による道路封鎖や隣家への被害
  • 台風・強風時の屋根材や外壁の飛散
  • 豪雨時の土砂流出や崖崩れの危険性増大

4. 税負担の増加と資産価値の低下

未登記不動産や空き家を放置すると、経済的なデメリットも大きくなります:

  • 固定資産税の特例措置が受けられなくなる可能性
  • 空き家特別措置法による固定資産税の最大6倍増のリスク
  • 放置するほど資産価値が低下し、将来的な売却が困難に

5. 相続人間のトラブルと将来的な権利関係の複雑化

未登記のまま放置すると、将来的に相続人間のトラブルが発生しやすくなります:

  • 代を重ねるごとに法定相続人が増加し、権利関係が複雑化
  • 相続人の行方不明や連絡不能になるケースも
  • 将来的な売却・活用が事実上不可能になるケースも

2024年4月から相続登記が義務化!知らないと罰則も

2024年4月から相続登記が義務化され、相続から3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。この法改正は、全国に増え続ける所有者不明の不動産問題に対処するための措置です。そしてこれは2024年4月以降に発生した相続に限られる話ではなく、それ以前にすでに発生していた相続についても適用される話です。

義務化のポイント

  • 不動産を相続した場合、3年以内に相続登記申請が必要
  • 正当な理由なく申請しなかった場合、10万円以下の過料
  • 相続人申告登記制度の創設(登記申請より簡易な手続き)

相続人申告登記制度とは:2024年から義務化された相続登記への対応策として設けられた簡易な仕組みです。これにより手続きを迅速かつ簡単に行えるようになり、不動産の所有者不明問題や防災上の課題解決にも貢献します。この手続きをすることで罰則は回避できますが、あくまでも暫定的な措置です。またこの制度では法定相続分で共有状態となるため、遺産分割協議による具体的な持分配分は反映されません。後日、遺産分割協議が成立した場合には通常の相続登記への変更が必要です。

相続未登記不動産の権利関係が複雑化する前に行動を

相続登記を放置すると、不動産の権利関係は時間とともに複雑化します:

  • 相続人が亡くなると、その相続人の子どもたちにも権利が分散
  • 相続人が増えるほど合意形成が困難に
  • 遠方に住む相続人や疎遠な親族との連絡が困難になるケースも

空き家・未登記不動産の有効活用で防災力向上と資産価値の最大化を

未登記不動産や空き家は放置せず、積極的に活用することで防災リスクを低減し、資産価値を高めることができます。

1. 相続登記を早期に完了させる重要性

相続登記を早期に完了させることで、様々なメリットが生まれます:

  • 災害時の保険請求や復旧手続きがスムーズに
  • 将来的な売却や活用がしやすくなる
  • 相続人間のトラブル防止
  • 固定資産税の特例措置が受けられる可能性

2. 空き家・未利用不動産の売却という選択肢

維持管理が難しい空き家・未利用不動産は、思い切って売却することも選択肢です:

  • 管理負担やコストから解放される
  • 売却益を得られる(放置するほど価値は下がる)
  • 新しいオーナーによる活用で地域の防災力向上に貢献
  • 固定資産税や維持費などの経済的負担からの解放

3. リノベーションや賃貸活用による価値創造

空き家をリノベーションして活用する方法も検討価値があります:

  • 賃貸物件として収益化
  • 地域の活性化に貢献するシェアスペースやコミュニティ施設に
  • 防災拠点や災害時の避難所として地域に貢献

4. 自治体の空き家バンクや補助金制度の活用

多くの自治体では空き家対策のための補助金や支援制度を設けています:

  • 解体費用の補助(内容は各自治体によって異なります。物件所在地の自治体へお問い合わせを)
  • リフォーム費用の助成
  • 空き家バンク制度による売買・賃貸のマッチング支援

【実践編】空き家・未登記不動産の問題解決ステップ

実際に空き家や未登記不動産の問題を解決するための具体的なステップをご紹介します。

Step 1: 不動産の現状を確認する

まずは所有不動産の現状を確認しましょう:

  • 法務局で登記簿謄本を取得し、登記状況を確認
  • 実地調査で建物の状態を確認(老朽化の程度、修繕の必要性など)
  • 固定資産税評価証明書で課税状況を確認

Step 2: 相続関係者の調査と合意形成

相続が関係する場合は、関係者との合意形成が重要です:

  • 法定相続人の調査(戸籍謄本等で確認)
  • 相続関係図の作成
  • 相続人全員との話し合いと方針決定

Step 3: 専門家への相談

複雑な問題は専門家のサポートを受けることが重要です:

  • 司法書士:相続登記手続き
  • 土地家屋調査士:境界確定や測量
  • 不動産会社:売却や活用の相談
  • 税理士:税金面のアドバイス

Step 4: 活用・売却・登記の実行

方針が決まったら、迅速に実行に移しましょう:

  • 相続登記の申請
  • 不動産会社と連携した売却活動
  • リノベーションや活用計画の実行
  • 解体や更地化の手続き

【コラム】あなたの不動産は大丈夫?防災リスクチェックリスト

以下のチェックリストで、お持ちの不動産の防災リスクをセルフチェックしてみましょう。

□ 不動産を相続したが、登記名義を変更していない
□ 親や祖父母名義のままの不動産を使用している
□ 空き家を数年以上放置している
□ 定期的な点検や管理をしていない
□ 所有する不動産の権利証や登記簿謄本を確認したことがない
□ 火災保険に加入していない、または契約内容を把握していない
□ 私道や共有地の所有者や管理状況がわからない
□ 相続人同士で不動産の活用方針について話し合ったことがない

3つ以上当てはまる場合は要注意! 防災リスクが高まっている可能性があります。早急に専門家への相談をおすすめします。

まとめ:空き家・未登記不動産の放置は防災リスク — 今すぐ行動を

大船渡市の山林火災事例からも明らかなように、未登記不動産や空き家の放置は、大きな防災リスクを生み出します。今回紹介した問題点を踏まえ、以下の行動をおすすめします:

  1. 相続登記を早急に完了させる
  2. 空き家・未利用不動産の売却や活用を検討する
  3. 専門家(不動産会社・司法書士など)に相談する
  4. 地域の防災力向上に貢献する不動産活用を考える

災害はいつ起こるかわかりません。今回の火災被害を教訓に、自分の財産を守り、地域の防災力を高めるためにも、不動産の適切な管理と活用を心がけましょう。


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楽府株式会社では、未登記不動産の相続登記や空き家売却に関する無料相談を実施しています。地域密着型の不動産会社として、専門家(弁護士・司法書士)との連携により、スムーズな登記・売却をサポートいたします。

  • □ 「火災で被災した不動産の登記はどうすればいい?」
  • □ 「未登記のまま相続してしまった不動産をどうすべき?」
  • □ 「空き家を売却したいけど、どうすればいい価格で売れる?」
  • □ 「私道の相続登記がなく、近隣とトラブルになっている」

こういったお悩みを解決するお手伝いをいたします。初回相談は完全無料です。

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manabito

楽府株式会社 代表取締役/ 宅地建物取引士 / 不動産と文化の融合を目指す不動産会社「楽府株式会社」代表取締役。 宅建士。その他合格・取得資格は行政書士(未登録)/応用情報技術者/第二種電気工事士など。 不動産売却や相続不動産の相談を専門。特に、八王子市・日野市・府中市など多摩地域の不動産売却に精通し、売却成功事例や査定のポイントを分かりやすく解説することが得意。 相続セミナー講師(日野市後援、国分寺市後援、多摩市後援、厚木市後援の相続セミナー実績あり) ブログを通じて、不動産の悩みを抱える皆様に「賢い売却の選択肢」を提供できるよう努めています。

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