
🔹 本記事の監修者
この記事は、相続税・不動産税務の専門家である 小澤彰宏税理士の監修のもと執筆されています。
「相続した家や土地を売ろうと思うけど、税金はどうなるの?」
「特例って本当に使えるの?条件は?」
相続した家や土地を売却すると、譲渡所得税・登録免許税・印紙税などの税金が発生します。しかし、3,000万円特別控除や取得費加算の特例を活用すれば、税負担を大幅に軽減できます。
本記事では、税理士監修のもと2025年最新の税制を詳しく解説。さらに、実際の売却事例を交えながら、節税対策・必要な手続き・注意点を分かりやすくご紹介します。相続不動産の売却を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
- 相続不動産を売却するとかかる税金とは?(2025年最新版)
- 2025年版の税金特例(3,000万円特別控除など)とはどんな制度?
- 特例を活用した売却事例
- 売却時の手続きと必要書類とは
- 注意が必要!よくある誤解とその解説
- 税金特例を最大限活用するためのポイントとは
- まとめ
相続不動産を売却するとかかる税金とは?(2025年最新版)
相続した不動産を売却する際には、相続税とは別にいくつかの税金がかかります。主な税金の種類と概要は次のとおりです。
【譲渡所得税】不動産売却の利益にかかる税金とは?
譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)とは、 不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、その利益に対して課税される税金です。個人が不動産を売却した際の譲渡所得は他の所得と分離して課税され、長期譲渡所得(所有期間5年超)なら約20%(所得税15%+住民税5%)、短期譲渡所得(5年以下)なら約39%(所得税30%+住民税9%)の税率が適用されます(※復興特別所得税を除く概算)。所有期間の判定は相続で取得した場合、亡くなった方が取得した日から計算されます。つまり、被相続人が長く所有していた不動産なら、相続後すぐに売却しても長期譲渡所得扱いとなり税率が低くなります。一方、譲渡所得の金額は売却代金から取得費や売却費用を差し引いて計算します。取得費とは被相続人が購入した際の価格や手数料等で、もし金額が不明な場合は売却価格の5%を取得費とみなすこともできます。なお、不動産の売却益に対する所得税の計算は確定申告で行い、売却した翌年の2~3月に申告・納税します。
所有期間 | 税率(所得税+住民税) |
---|---|
5年以下(短期譲渡所得) | 約39% |
5年超(長期譲渡所得) | 約20% |
【登録免許税】名義変更時に必要な税金とは?
登録免許税 とは相続登記(名義変更)の際にかかる税金です。不動産を相続したら、まず法務局で相続人への名義変更登記を行う必要がありますが、その際に不動産評価額の0.4%(土地・建物それぞれ)に相当する登録免許税を納めます。例えば評価額2,000万円の不動産であれば相続登記時に8万円の登録免許税が発生します(※2025年現在の税率)。相続登記は2024年4月1日から義務化されており、相続開始を知った日から3年以内に申請する必要があります。売却に先立ち登記が済んでいないと買主に権利移転できないため、売却前に相続登記を完了させておきましょう。
【印紙税】契約書に必要な税金の金額と注意点
印紙税とは不動産の売買契約書に貼付する収入印紙の費用です。契約書の契約金額に応じて税額が決まっており、例えば1,000万円超〜5,000万円以下の契約書は1万円(軽減措置適用時)の印紙税が課されます(※2025年度現在の措置による)。印紙は契約書1通ごとに必要ですが、通常は売主・買主がそれぞれ作成する契約書に各自が印紙を貼ります。印紙税は契約締結時に一度支払うものですが、貼り忘れた場合は重い過怠税が科されるため注意しましょう。
【消費税】不動産売却時に発生するケースと対策
消費税 ですが、 不動産そのものの売却には土地は非課税、建物は課税対象です。よって個人間の住宅売買では売主が消費税事業者でない限り課税されません。しかし、不動産会社への仲介手数料や司法書士への報酬などには通常どおり消費税(10%)がかかります。こちらも売却時に支払うコストとして考慮が必要です。
以上が主な税金の種類です。相続税そのものは被相続人の死亡に伴い課される税金であり、売却時には直接関係しません。ただし、後述するように相続税を支払った場合に譲渡所得税を軽減できる特例も存在します。次章では、2025年時点で適用できる税金の特例制度について解説します。
2025年版の税金特例(3,000万円特別控除など)とはどんな制度?
相続不動産を売却する際には、一定の条件を満たせば譲渡所得の課税を大幅に軽減できる特例制度があります。2025年時点で押さえておきたい主な特例は以下のとおりです。
相続税の取得費加算の特例
「取得費加算の特例」とは、相続や遺贈により取得した土地・建物などを一定期間内に売却した場合に、その不動産の取得費に相続税額の一部を加算できる制度です。譲渡所得の計算上、取得費が増えると課税される利益が減るため、その分譲渡所得税を減額できます。この特例を適用するための主な条件は次のとおりです。
- 売主(相続人)がその財産を相続または遺贈で取得していること。
- その相続人に対して相続税が課税されていること(相続税の申告・納税が発生したケースであること)。
- 相続開始日の翌日から相続税の申告期限(10か月後)の翌日以降3年を経過する日までに売却していること(約3年10か月以内に売却した場合が目安となります)。
例えば2021年1月に相続が発生し、同年10月に相続税申告を行った場合、2025年10月頃までに売却すれば取得費加算の適用要件を満たします。適用時には譲渡所得の申告の際に「取得費加算額」の計算明細を添付し、加算後の取得費で税額計算を行います。この特例により、相続税として支払った一部を譲渡益の圧縮に充てられるため、特に「被相続人が購入した時の価格が不明で5%ルールだと不利になるケース」で有効です。ただし、後述の3,000万円控除(空き家特例)との重複適用はできない点に注意が必要です(どちらか有利な方を選択)。
被相続人居住用財産(空き家)を売ったときの3,000万円特別控除
「相続空き家の3,000万円特別控除」とは、被相続人(亡くなった方)が居住していた家屋やその敷地を相続によって取得した相続人が、一定の要件を満たして売却した場合に譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例です。この制度は近年の税制改正で2027年(令和9年)12月31日まで延長されており、2025年の売却でも適用可能です。ただし、相続人が3人以上いる場合は控除額が一律2,000万円に減額される点が2024年から新たに設けられています。この特例の主な適用要件は以下のとおりです。
- 被相続人が亡くなる直前まで居住していた一戸建て住宅であること(マンション等の区分所有建物は対象外)。
- 家屋が昭和56年5月31日以前に建築された古い住宅であること(旧耐震基準の建物)。
- 相続開始時にその家屋に被相続人以外の人が住んでいなかったこと。
- 相続後、売却までの間に事業用や賃貸用、他の人の居住用に供していないこと(相続人が誰も住まず空き家のまま維持していたこと)。
- 相続開始から3年後の年末までに売却すること。具体的には、例えば2022年中に相続が発生した場合は2025年12月31日までに売却が完了している必要があります。
- 売却代金が1億円以下であること。
- 売却に際し、家屋が一定の耐震基準を満たしていること、または耐震性を満たさない場合は取り壊して土地のみを売却すること。なお2024年以降は、売却後に買主が耐震リフォームを行う場合でも特例適用が認められるよう緩和されました。
- 売却先が親族など特別な関係者ではないこと。
これら要件は厳しいですが、満たすことができるなら譲渡所得から最大3,000万円を差し引けるため節税効果は絶大です。控除適用時の譲渡所得の計算式は「譲渡価額-取得費-譲渡費用-3,000万円」となり、控除額の範囲内で譲渡益がゼロまたはマイナスになれば所得税・住民税は課税されません。例えば譲渡益が2,500万円であれば全額控除されて税金ゼロ、譲渡益が5,000万円なら3,000万円控除後の2,000万円に対してのみ課税されます。
適用を受けるには、市区町村が発行する確認書の入手や耐震証明書の提出など所定の手続きが必要です。また、この「相続空き家3,000万円控除」と前述の「取得費加算の特例」は同じ譲渡については併用できないので注意してください。どちらも要件を満たす場合は、自身のケースでどちらが節税効果が高いか(控除額と追加取得費による税額減少効果)をシミュレーションし、有利な方を選択する必要があります。
特例名 | 控除額 | 適用条件 |
---|---|---|
相続空き家の3,000万円控除 | 最大3,000万円 | 旧耐震基準の空き家など |
取得費加算の特例 | 相続税額の一部 | 相続税を支払った場合 |
(参考)居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除
相続した不動産を自分や亡くなった親と同居していた家として使っていた場合には、上記「相続空き家」の特例ではなく、マイホームの譲渡に関する3,000万円特別控除の適用を受けられるケースがあります。例えば被相続人と生前同居していた子がそのまま引き続き居住し、後に売却するような場合です。この「居住用財産を売ったときの特例」は相続が絡まない通常のマイホーム売却時と同様、譲渡益から最高3,000万円を控除できます。適用要件は「自分が居住していた家屋であること」「過去2年以内に同特例を使っていないこと」などで、空き家特例と比べ条件は緩やかです。ただし、適用の可否は相続の状況や居住実態によりますので、自分が当てはまるか専門家に確認するとよいでしょう。なお、この居住用財産特例は10年超所有軽減税率(長期保有のマイホーム譲渡税率軽減)など他のマイホーム特例との併用も可能です。
以上、2025年時点で知っておきたい主な税制上の特例を紹介しました。次章では、実際に特例を活用して相続不動産を売却した事例を見てみましょう。
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ここでは、相続不動産の売却において税金特例を上手に利用した具体的な事例を紹介します。譲渡所得税の負担がどの程度軽減できるのか、数字を用いて比較してみましょう。
事例: 5年前に亡くなった父親から相続した実家(土地・建物)を2025年に売却したケースを考えます。父親が購入した当時の取得費は合計2,000万円、売却価格は5,000万円、売却にかかった仲介手数料等の費用は200万円とします。相続人は長男一人で、相続税は発生していないものと仮定します(つまり取得費加算の適用なし)。この場合の譲渡所得税額を、「特例を使わない場合」と「相続空き家の3,000万円特別控除を使った場合」で比較すると次のようになります。
項目 | 特例なし | 特例あり(相続空き家3,000万円控除) |
売却価格 | 5,000万円 | 5,000万円 |
取得費(購入時の価格等) | 2,000万円 | 2,000万円 |
譲渡費用(仲介手数料等) | 200万円 | 200万円 |
譲渡所得(売却益) | 5,000万円-2,000万円-200万円=2,800万円 | 5,000万円-2,000万円-200万円=2,800万円 |
特別控除 | なし | 2,800万円(※最大3,000万円まで控除可) |
課税される所得金額 | 2,800万円 | 0円 |
譲渡所得税額(長期譲渡20%と仮定) | 約2,800万円×20%=560万円 | 0円 |
上記は概算の例示です(復興特別所得税等は考慮せず)。
このように、仮に譲渡益が3,000万円以下で特例要件を満たす場合、譲渡所得税はゼロになります。仮に譲渡益が控除額を超える場合でも、最大600万円超の税額を軽減できる効果があり得ます(課税長期譲渡所得3,000万円分×約20%=約600万円の節税)。一方、この事例では相続税を払っていないため取得費加算の特例は使えませんが、もし相続税を払っていた場合にはその一部を取得費に加算でき、特例なしの場合の譲渡所得自体を圧縮できたでしょう。適用できる特例によって効果は異なるため、自身のケースで最適な特例を選ぶことが重要です。
なお、特例を使う場合でも確定申告は必須です。上記のような3,000万円控除を適用する場合、申告書に所定の欄の記入と証明書類の添付が必要になります。次章では、実際に相続不動産を売却する際の手続きと必要書類をご案内しましょう。
売却時の手続きと必要書類とは
相続した不動産を売却するには、相続手続きと不動産売却手続きの両方を順序立てて進める必要があります。大まかな流れと必要な書類・手続きをまとめます。
売却までの基本的な流れ
📝 ①相続人確定 戸籍を取得し相続人を特定 |
🏡 ②名義変更 相続登記(登録免許税0.4%) |
📢 ③売却活動 不動産会社へ媒介依頼 |
📄 ④売買契約 印紙税・契約手続き |
💰 ⑤引き渡し 決済・登記・確定申告 |
- 相続人の確定と遺産分割協議 – まず誰が相続人になるか(戸籍調査)を確認し、遺言書の有無を確認します。遺言がなければ相続人全員で遺産分割協議を行い、不動産を誰が取得するか決定します。共有とする場合もありますが、売却を円滑に進めるため代表相続人一人が不動産を相続する形にすることが多いです(他の相続人には後で売却代金を分配)。遺産分割協議書を作成し、相続人全員の実印を押印します。
- 相続登記(名義変更) – 不動産の所有者を相続人名義に変更します。上記で決めた取得者への名義変更登記を法務局で申請し、登録免許税を納付します。2024年以降は相続登記が義務化されているため早めに対応しましょう。この登記が完了しないと第三者に売却できないため、売却前提なら速やかに行うことがポイントです。
- 売却活動(不動産会社への依頼) – 名義が相続人に変わったら、不動産仲介会社に売却の媒介を依頼します。査定を依頼し、納得できる価格で売却活動を開始しましょう。相続登記中でも売却活動自体は可能ですが、買主との契約までに登記完了予定であることが望ましいです。相続人が複数いる場合は代表相続人が売主となり、他の相続人は協議書に基づき持分移転に協力します(または契約前に共有名義にして全員が売主として契約)。
- 売買契約の締結 – 買主が見つかったら売買契約を交わします。契約書に収入印紙を貼り、相続人(売主)全員が署名・押印します。契約時には手付金を受領し、物件の権利関係や引渡し条件等を取り決めます。必要書類として、売主側は本人確認書類(運転免許証等)や印鑑証明書、登記識別情報(権利証)、固定資産税評価通知書などを準備します。相続登記が完了していれば登記簿上も相続人名義になっているはずなので、登記事項証明書(登記簿謄本)も用意しましょう。
- 残代金決済・引き渡し – 契約後、買主の住宅ローン承認などを経て、決済日(引渡日)に残代金を受領します。売主は鍵や権利証などを引き渡し、司法書士立会いのもと買主への所有権移転登記を行います。このとき固定資産税日割精算金も清算されます(引渡日を境に日割計算)。引渡しが完了すれば売却手続きは終了です。
- 確定申告 – 売却した翌年の確定申告期間(原則2月16日~3月15日)に所得税の確定申告を行います。譲渡所得が発生していれば申告が必要であり、特例の適用を受ける場合も必ず申告して控除や特例適用を申請します。申告書には売却代金や取得費、特別控除額などを記載し、特例適用の場合は必要書類(例えば空き家3,000万円控除なら市区町村発行の確認書など)を添付します。申告後に計算された所得税・復興税・住民税を期限までに納付します。
売却に必要な主な書類
上記プロセスで出てきたものを中心に、相続不動産の売却で準備すべき書類をまとめます。相続手続き段階から売却契約・決済段階まで、順に必要となる代表的な書類は以下のとおりです。
- 戸籍謄本(全部事項証明書) – 被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本と、相続人全員の現在の戸籍謄本。相続関係の証明に必要。
- 住民票の除票・住民票 – 被相続人の死亡時の住民票除票(最終住所の証明)と、相続人の住民票。登記や税務で使用。
- 遺産分割協議書 – 相続人全員が署名・実印押印した協議書。登記申請や売却手続きの基礎資料。
- 不動産登記関係書類 – 登記申請書(司法書士が作成)、固定資産評価証明書(登録免許税計算用)、登記事項証明書(名義変更後の登記簿謄本)など。
- 印鑑証明書 – 相続人(売主)全員のもの。遺産分割協議書や不動産売却契約書への実印押印に対応するため必要(発行後3か月以内のもの)。
- 本人確認書類 – 売却手続きに臨む相続人の運転免許証やマイナンバーカード等。契約時・決済時に提示。
- 権利証(登記識別情報) – 相続登記完了後に交付される権利証(登記識別情報通知)。買主への所有権移転登記の際に必要。
- 固定資産税納税通知書 – 毎年市区町村から届く固定資産税・都市計画税の通知書。物件の課税評価額や税額の確認に使います。
- 物件資料一式 – 土地測量図・境界確認書、建物図面・間取図、設備の取扱説明書など、買主に引き継ぐべき資料。任意ですが揃えておくと売却交渉がスムーズです。
- 特例適用関係書類 – 該当者のみ。例えば「被相続人居住用家屋等確認書」(空き家特例用)、耐震基準適合証明書や家屋取壊し証明書、相続税の申告書控え(取得費加算用)など、税務申告時に必要な書類。
必要書類はケースによって増減しますが、早めに収集しておくことが肝心です。特に戸籍類は役所で発行に時間がかかる場合もあるため、相続発生後に速やかに取得しておきましょう。書類が不足すると売却手続きが滞る原因になりますので、「何が必要か分からない…」という場合は司法書士や不動産会社に事前に確認し、計画的に準備してください。
注意が必要!よくある誤解とその解説

相続不動産の売却にまつわる税金については、一般の方には分かりにくい点も多く、いくつか誤解しやすいポイントがあります。ここでは典型的な誤解を挙げて、その正しい解釈を解説します。
- 誤解①:「相続した不動産を売ったら相続税がかかる」
– 相続税はあくまで相続財産を取得したときに課税される税金であり、売却そのものには通常かかりません。売却時に課税されるのは譲渡所得に対する所得税・住民税です。つまり「相続税」と「譲渡所得税」は別物で、課税のタイミングも種類も異なります。例えば、相続税の基礎控除内で相続税がかからなかった人でも、売却益が出れば譲渡所得税は課税され得ます。「相続税がかからなかった=売却しても税金不要」ではないので注意しましょう。
- 誤解②:「売却代金全額に税金がかかる」
– 譲渡所得税の対象となるのはあくまで利益部分のみです。売却代金から、取得費(もともとの購入価格や相続税課税分の加算額)と譲渡費用(仲介手数料や解体費用等)を差し引いた残りが課税譲渡所得となります。例えば5,000万円で売却しても、取得費や費用に4,500万円かかっていれば利益は500万円となり、その500万円に対してだけ税金が計算されます。反対に取得費が不明だと低めに見積もられてしまい、本来より多い利益が出たことになって税額が増えるケースもあります。必ず利益計算を正しく行い、必要経費はもれなく差し引きましょう。
- 誤解③:「譲渡所得の5年ルールは相続後の年数だ」
– 譲渡所得税の長期・短期の区分は、相続で取得した場合被相続人の取得時から通算します。例えば親が20年前に購入した土地を子が相続してすぐ売却しても、所有期間は20年超として長期譲渡扱い(税率20%)です。一方、親が直近で取得した不動産を受け継いだ場合は、通算期間が5年以下なら短期譲渡扱い(税率39%前後)となる可能性があります。相続後の経過年数ではなく被相続人からの通算という点を覚えておきましょう。「相続してから5年待てば税率が下がる」と単純に言えないので、判断に迷う場合は専門家にご相談ください。
- 誤解④:「3,000万円控除は誰でも無条件に使える」
– 3,000万円特別控除には種類ごとに厳格な適用要件があります。前述のとおり、相続空き家の3,000万円控除は家屋の築年や居住状況、売却時期など細かな条件をすべて満たす必要があります。また居住用財産の3,000万円控除も、自分が住んでいた家であることや過去の適用歴などの制限があります。要件を一つでも欠けば適用されません。例えば「親が老人ホームに入所して空き家になっていた家」は特例の別要件で救済される場合がありますが、単に「築浅の家だから大丈夫」というものではありません。必ず正式な要件を確認し、自分のケースが当てはまるか検証しましょう。
- 誤解⑤:「複数の特例を全部使えばもっとお得になる」
– 税金の特例には併用不可の組み合わせがあります。例えば取得費加算の特例と空き家3,000万円特別控除は同時に適用できません。また居住用財産の3,000万円控除と空き家特例も重複する場面は通常なく、いずれかの適用となります。併用できる場合でもそれぞれ要件を満たす必要があるため、現実的には使える特例は限られることが多いです。一番効果の大きい特例を選択的に適用するのが基本ですので、「全部使って税金ゼロに…」という期待は禁物です。税制に明るい専門家と相談しながら最適な組み合わせを検討しましょう。
以上のように、誤解しやすい点はいくつかありますが、正しく理解すればリスクを避け有利に進めることができます。最後に、相続不動産の売却で税金特例を最大限活用するためのポイントをまとめます。
税金特例を最大限活用するためのポイントとは
相続した不動産を売却する際に税負担をできるだけ抑えるためには、以下のポイントに留意しましょう。
- 早めにプロに相談する: 相続税や譲渡所得税の特例は要件が複雑です。相続が発生した段階や売却を検討し始めた段階で、税理士や不動産に詳しい専門家に相談しましょう。早期に相談すれば、どの特例が使えそうか事前に判断でき、売却の時期や方法を有利に計画できます。専門家は最新の税制改正にも通じているため、2025年現在の最新制度を踏まえたアドバイスが得られます。
- 売却タイミングの戦略を立てる: 特例には適用期限や期間要件があります。例えば空き家3,000万円控除なら「相続から3年以内の年末まで」に売却しないと適用できません。一方、取得費加算特例は相続税申告から約3年以内(3年10か月)に売却しないと使えません。こうした期限を見据えて、「いつまでに売るべきか」「逆にいつまで待てば有利になるか」を計画しましょう。特に不動産市況や物件の状況も考慮しつつ、期限ギリギリにならないよう余裕を持って売却活動を行うことが大切です。
- 物件の状況を整える: 空き家特例を狙うなら、耐震基準を満たすかが大きなポイントです。昭和56年以前の建物で旧耐震の場合、売却までに耐震リフォームを行うか、いっそ更地にしてしまう選択肢もあります。2024年以降は買主による耐震改修でも認められるようになりましたが、古い家の場合「更地にしたほうが売りやすく高く売れる」ケースもあります。特例適用と売却額アップのバランスを考え、必要なら思い切った整備(解体等)も検討しましょう。また、相続登記など事前手続きも済ませ物件資料を揃えておくことで、買主にも安心感を与えスムーズに売却が進みます。
- 必要書類・証明を確保する: 特例適用には証明書類が不可欠です。空き家特例なら市町村発行の被相続人居住用家屋等確認書の取得手続きが必要ですし、耐震リフォームをしたなら耐震基準適合証明書を用意します。取得費加算なら相続税申告書の控えや納税証明書などが根拠資料になります。これらを適時に入手・準備し、確定申告時に間に合うようにしましょう。書類不備で特例を受けられないともったいないので、チェックリストを作って漏れなく集めることをおすすめします。
- 複数の特例を比較検討する: 自分が使えそうな特例が複数ある場合、それぞれ適用した場合の税額をシミュレーションしてみましょう。例えば取得費加算と3,000万円控除では、物件によってどちらが節税額が大きいか変わります。前述のとおり併用はできない組み合わせもあるため、ベストな一つを選ぶ判断が必要です。シミュレーションは難しければ税理士に依頼すれば計算してもらえます。安易に「こっちの方がよさそう」と決めつけず、数字に基づいて有利な方法を選択しましょう。
- 売却代金の分配と納税資金: 複数の相続人で売却代金を分ける場合、税金の負担も各相続人ごとに生じます。代表者が一括で登録免許税や印紙税を立替えた場合は、分配時に精算すると公平です。また譲渡所得税は基本的に翌年に各自納付するため、高額な税額が見込まれる場合は手元に納税資金を残しておくことも重要です。特例で大幅に圧縮できるとはいえ、例えば控除後に2,000万円の譲渡益が出れば約400万円の税金となります。分配の際には各人の税負担も踏まえて配分や代金管理をしましょう。
以上のポイントを踏まえて準備・手続きを進めれば、相続不動産の売却において税金特例を最大限に活用できるはずです。税制は改正が付きものですから、最新情報をチェックしつつ、必要に応じて専門家のサポートも受けながら進めてください。適切な手順を踏めば、余計な税金を払わずに済み、手元に残る売却益を最大化することができます。相続した大切な不動産を有効に活用し、円満な相続と賢い資産整理を実現しましょう。
参考情報・公式サイト: 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」、国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」、国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」、ほか
まとめ
楽府株式会社より|相続不動産の売却をお考えの方へ
この記事を通して、相続した不動産を売却する際に「どんな税金がかかるのか?」「特例を使えばどれくらい節税できるのか?」といった疑問を少しでも解決できたのではないでしょうか。不動産の売却は、単なる資産処分ではなく、相続税や譲渡所得税の節税、財産の最適な活用を考えた戦略的な判断が必要です。そうはいっても、「じゃあ自分の場合はどうなの?」と思われるかもしれません。楽府株式会社は、八王子市・日野市・府中市を中心に相続不動産の売却・査定・活用をサポートしております。私たちは、単なる仲介業務にとどまらず、士業(税理士・司法書士)との連携を強化し、最適な税制対策や手続きのアドバイスを提供しています。
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