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【不動産コラム】連帯保証人がいるのに家賃保証会社って必要なの?

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不動産を借りる時の連帯保証人とは?

 不動産を借りる際に、連帯保証人を求められることはよくある話です。保証会社を使うことで連帯保証人を必要としない物件も増えてきましたが、まだまだ多くあります。また個人で不動産を借りる時だけではなく、法人で不動産を借りる時にも、代表取締役が個人で連帯保証人になることが必要なケースも多々あります。

 連帯保証人とは、実際に物件を借りている方が払うべき家賃などのお金を、肩代わりして払う人のことです。連帯保証人自身が物件を借りていても借りていなくても、不動産のオーナーさんから請求されたら払わなければなりません。非常に責任の重い立場なのです。

なぜ連帯保証人が必要なの?

 それではなぜ、連帯保証人が必要なのでしょうか。理由は大きく分けて3つあります。1つ目はもちろん、借主はいつも家賃をきっちり払えるとは限らないケースがあること。2つ目は借主が行方不明になるケースがあること。3つ目は借主が自分のモノを置いたまま出て行ってしまうケースがあること。という3つです。

 不動産賃貸借契約では、オーナーは不動産という大切な財産を貸しています。しかし上述のようなケースでは、オーナーは大変困るわけです。

 例えば家賃を請求しても払ってもらえないのでは貸している意味がありません。最終的には裁判にまでなるわけですが、訴状を作って裁判所まで行って、裁判をして、確定判決を得て、やっと出て行ってもらうことができる、短くても約6か月かかります。請求しても無い袖は振れぬとかいうパターンもあります。その費用と手間とは小さいものではありません。

 また借りている本人が行方不明になってしまった場合でも、賃貸借契約自体は残っているわけです。一体この契約をどうするのか、続けるのか止めるのか、全くどうして良いか分からないことになります。

 さらにさらに、不動産に放置された荷物などはどうすれば良いのでしょうか。そもそも放置された荷物などは動産、つまり借りている人に所有権があるものです。オーナーの不動産上に存在するものでも、これを勝手に片付けることはできません。荷物の中には時間の経過と共に腐って異臭を発するものや、産業廃棄物等もあったりします。お店の什器や備品、これはお店の方の物かそれとも誰かから借りている物なのか、実はお客様のものなのか、全く分かりません。あれだけ放置していたのに、忘れた頃にひょっこりやってきて「あれは大切な人から借りているもので今すぐに返さなければいけません」「あの看板は金(きん)でできていたもので」とか言い出す人もいる始末。保管や撤去には専門の業者を呼んで多大な費用をかけて慎重に行う必要があるものも存在するわけです。

 ということで、不動産という大切な資産を貸すオーナーには、リスクが大きすぎるため賃借人だけではなく、賃借人と一緒に責任を負う人、つまり連帯保証人を求める必要があるのです。

うちは大きい会社なのに、連帯保証人が必要なのか?

 不動産賃貸借契約で連帯保証人を求められる理由をみて、こう思われた方もいらっしゃることでしょう。

「うちは大きい会社なのに、社長が連帯保証人になれと言われた。家賃くらい払えるわ。不愉快だ!」

 実際にこのように仰る会社様も少なくありません。たしかに家賃自体は、会社の売上規模に比べると取るに足らないとお感じになる方もいらっしゃるかもしれません。しかしそれではいけません。大きい会社であっても、いつどうなるか分からないのはご存じの通りです。また、ご存じのように会社は法人です。法人は権利の主体となる能力を法で認めて自然人と同等と扱っているだけに過ぎず、実際には責任の所在が不明瞭なことが多くあります。さらに大きいがゆえに、扱っているものも大きく、一般人であるオーナーにはどうして良いか分からないものが残置されてしまったりします。私の関わったケースでも、「何トンもの土砂」とか「医療廃棄物」とか正直困るものが残置されてしまって、肝心の会社自体は消滅してしまったというようなことがありました。こうなると会社は消滅してしまってもう存在しないので、責任の追及の仕方が大変難しいのです。ということで「大きい会社だから、信用があるから、連帯保証人なんて不要だろう!」という理屈は全く当てはまらず、大きい会社だからこそ必要な連帯保証人だったりするわけです。

賃貸借契約の救世主?家賃保証会社とは?

 さて、ここまで連帯保証人が必要な理由を見てきましたが、そうは言っても責任の大きい連帯保証人を頼むというのは骨が折れるものです。基本的には親や兄弟に頼むことが多い連帯保証人、家族の在り方や関係性によっては連帯保証人を用意できないことも多いものです。そこで最近では保証会社を介して賃貸借契約を締結する物件も増えてきました。連帯保証人が用意できなくても、万一の際には保証会社が家賃債務を肩代わりしてくれるというものです。もちろんその肩代わりした分は、不動産を借りている本人が後から保証会社に支払わなければならない債務となりますし、その分いくらかのお金を追加で保証会社に払わなければなりません。

なぜ連帯保証人がいるのに、保証会社を付けてくれと言われるのか

 しかし、物件を見に行って、気に入って申し込みをしたら、保証会社から連帯保証人を付けてくれと言われた経験がある方も多いのではないでしょうか。連帯保証人が用意できないから、お金を払って保証会社と契約したのに、連帯保証人を付けるなんて意味が分からないと思われるかもしれません。では何とかして連帯保証人をつければ保証会社と契約しなくて済むのか尋ねたら、不動産会社から「こちらの保証会社と契約していただくことが契約の条件ですから…」と言われてしまう。こういった経験があるのではないでしょうか。あるいは法人であれば、「代表取締役が連帯保証人になってください」と言われて、しぶしぶ連帯保証人になってみたものの、それでも保証会社にお金を払って、保証してもらわないといけないと言われて、「なんで?」と思われたことのある方もいらっしゃることでしょう。なぜこういったことが起きるのか、ご説明します。

 連帯保証人のように債務を肩代わりしてくれるシステムなので、ついつい勘違いしがちですが、実は保証会社は連帯保証人となってくれるわけではありません。賃貸借契約書をみると分かるように、保証会社は連帯保証人ではないのです。

 話の流れとしてはこうです。オーナーとしては「借りる人に万一のことがあっても、保証会社が家賃等の債務を肩代わりしてくれるのであれば不動産を貸しても良いよ」と思っています。そこで借りる人は「自分に万一のことがあっても代わりに肩代わりしてくれませんか?」と保証会社にお願してみます。すると保証会社は「連帯保証人がついた賃貸借契約であれば肩代わりのサービスを提供しても良いですよ」と回答します。そこで「自分と連帯保証人に万一のことがあった際には、保証会社に肩代わりしてもらいますから、不動産貸してください」という契約を結びます。こうなって初めて、オーナーもOKを出し、無事に賃貸借契約が成立します。これが連帯保証人がいたとしても保証会社を付けてくれと言われる理由です。

 ちなみに保証会社と結ぶこの「自分(と連帯保証人に)万一のことがあった際には肩代わりしてくれませんか?」「いいですよ」の契約を保証”委託”契約といいます。まさに万一の際のことを保証会社に委託しているわけです。

 保証会社は、借りる人(本人)と連帯保証人の債務を肩代わりするサービスを提供することで、オーナーがきちんと決められた日に家賃を受け取ったり、部屋を返してもらったりできるようにしているのです。よって、保証会社と契約したから連帯保証人が必要ないというわけでは決してありません。もちろん中には連帯保証人がいなくても保証を引き受ける賃貸借契約もあります。しかしそれはあくまでも例外であり、原則としては連帯保証人が存在する契約の肩代わりを引き受けるのが基本的な形です。借りる人がどんなに大きな会社であってもそれは変わりありません。どなた様も「連帯保証人をつけろと言われた!信用がないのか!」等と憤慨して素晴らしい物件との出会いを捨ててしまわないようにご注意くださいませ。

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