不動産

【不動産コラム】生命保険での相続税対策の注意点と孫を受取人にするデメリット

ハリー&ネリー

生命保険を活用した相続税対策は、場合によっては相続税対策にならないことがあるって聞いたんだけど、本当?

そうなんだ。実は保険金の受取人の指定の仕方によってはデメリットとなる場合もあるんだよ

福来郎
ハリー&ネリー

えっ!?デメリット?

相続税が高くなったり、むしろ損をしたりすることもあるんだ。
でもこれを読めば大丈夫。生命保険を活用して最大限に相続税を節税することができるようになるよ

福来郎

Contents

生命保険を活用した相続税対策とは

自分が亡くなった時に、愛する家族が少しでも安心して生活できるように、保険金を残してあげたい

そう思っている優しいあなた。その気持ちとてもよく分かります。しかしそんな私たちの優しい気持ちとは裏腹に、残念ながら残された家族が受け取る生命保険金にも相続税が課税されることになっています。

ちなみに生命保険には、生命保険だけの特別待遇として非課税枠があります。具体的には法定相続人×500万円が非課税となります。例えば私の家族は両親と兄妹4人ですが、父に相続が発生した場合には母と4人の兄妹の合計5人が法定相続人となりますので、500万円×5人=2,500万円までの生命保険金を非課税で受け取ることができます。

現金で2,500万円を相続すると相続税が発生しますが、生命保険金であれば非課税なのです。

なお、法定相続人の誰かが相続放棄をしていたとしても、その放棄がなかったものとして非課税枠は計算されます。

例えば私の家族の場合に私が相続放棄をすると、父が亡くなった際に実際に相続するのは母と妹3人の合計4人となりますが、そうなったとしても変わらず500万円×5人=2,500万円の保険金を非課税で受け取ることができます。参考;相続放棄についてはこちらの動画が参考になります。

また民法上の特別養子縁組となっている者や、配偶者の連れ子を養子にした場合は問題なく実子とみなされます。しかし保険金の非課税枠を増やす目的で、死の直前に養子を増やしてもそれほど効果は見込めませんのであしからず(実子がいる場合は1人まで法定相続人に追加可、実子がいない場合は2人まで法定相続人に追加可)。

法定相続人の人数×500万円の生命保険金は非課税

生命保険の非課税枠を誰に使うかは選べません

さて、生命保険金は法定相続人の人数×500万円が非課税となることは上で学んだ通りですが、保険金の受取人が複数存在している場合には、受け取る保険金の割合に応じて各人の非課税枠が決まります。相続人同士で話し合って勝手に決めることはできません。

例えば私の家のように、母と子供4人の相続人の場合、非課税枠は2500万円。これが大前提です。

そして実際に相続が発生して、母が1,250万円、そして4人の子供たちがそれぞれ312.5万円ずつ生命保険金を受け取るとしますと母は1,250万円、子供たちはそれぞれ312.5万円の非課税枠となります。

また父が頑張って生命保険金を積み立てていて6,000万円となり、相続が発生して母が2,000万円、4人の子供たちがそれぞれ1,000万円ずつ生命保険金を受け取ったとしますと、3分の1を受け取った母の非課税枠は約833万円、4人の子供たちはそれぞれ約416万円の非課税枠をもつこととなります。

父が頑張って積み立てた生命保険金6,000万円を全て、愛する妻に受け取らせることとしていた場合には、妻の非課税枠は2,500万円。つまり残りの3,500万円は課税対象となるということです。

こうしてみてみるとなんとなく「誰にどれだけ生命保険金を受け取ってもらうかを、きちんと考えておくことが大切そうだぞ」お気づきになられるのではないでしょうか。

各自の非課税枠は受け取る生命保険金の割合に応じて決まる

生命保険の受取人を配偶者ではなく子供にすべき理由

もし相続税の節税を目的として生命保険を活用しようと思うのであれば、受取人は配偶者ではなく子供にすべきです。

なぜなら夫婦間の相続では、そもそも最低でも1億6,000万円までを非課税にできる制度「配偶者の税額軽減」という特例があるからです。

これは“そもそも夫婦が二人三脚で頑張ってきた財産でしょ、それに残された方は今後も元気で長生きしてもらわないといけない。だからそこに税金をかけるのはかわいそうだよね”という趣旨で作られた制度です。

つまり、そもそも配偶者は最低でも1億6,000万円の相続税の非課税枠をもっているのだから、生命保険金の非課税枠は子供たちのために使う方がお得であることが多いわけです。

ただし、この配偶者の税額軽減を利用するに当たっては、きちんと申告をする必要があります(重要!)。
また威力が十分な節税アイテムだけに、使い方にも注意が必要です。必ず税理士に相談してください。

本当にお得か計算してみる

両親と子供二人という家庭で、父に相続が発生したとします。1億円の財産があるので、相続対策として1,500万円分の生命保険に加入することとし、仮に1,500万円の全てを愛する妻に受け取らせることにしたとしましょう。この場合の相続税は、妻はもちろん0円。子供たちはそれぞれ1,213,200円を納税しなければなりません。二人なので合計2,426,400円ですね。

一方で、生命保険金の受け取りを妻ではなく、二人の子供たちに、それぞれ750万円ずつ与えることした場合はどうでしょうか。この場合の相続税は、妻はもちろん0円。今度は子供たちが非課税枠を利用しますので、それぞれ849,200円で済みます。二人の合計は1,698,400円です。妻に保険金を受け取らせた場合より728,000円ほど節税できていることが分かります。

したがって、どうしても愛する配偶者に生命保険金を受け取って欲しい特段の事情がある場合は別ですが、節税という面で考えると、配偶者よりも子供に生命保険金を受け取ってもらうほうが得なのです。ということで、もし可能ならば保険金の受取人の変更を考えてみても良いかもしれません。

孫を生命保険の受取人にしてはいけません

さて、もしかするとこれをお読みのあなたには、かわいいかわいい孫がいらっしゃって

「私の人生、全てこの孫に捧げる!」

ということがあるかもしれません。そうであれば当然

「私の生命保険の受取人は、孫だ。孫しかない」

と思われることでしょう。

しかしその考え方ちょっと待ってください。実は孫を生命保険金の受取人にすると、非課税にならないのです。それどころか、損となることも多くなります。

なぜなら生命保険金の非課税枠は法定相続人にしか適用されないからです。孫は法定相続人ではありません。ですから孫への生命保険金はそのまま、まるっと相続税の対象となります。

孫が法定相続人となる場合もあるにはあります。例えば代襲相続(本来相続人となるはずだった被相続人の子や、兄弟姉妹が亡くなって、孫や甥・姪等がその者の代わりに相続すること)のケースや、養子縁組をしたケースです。しかし大抵の場合には孫は法定相続人ではありません。

その上、孫を生命保険金の受取人とすると、相続税の2割加算の対象となってしまいます。つまり通常支払う相続税の1.2倍を納税しなければならなくなるのです。

話はこれで終わりではありません。孫を生命保険金の受取人とすると、亡くなる前の3年以内に行われた贈与が全て無かったものとして扱われます。

ここでよく勉強されている方は、

「そうはいっても、生前贈与は孫にすべきなのは常識でしょ?なぜなら『亡くなる前3年以内に行われた駆け込み贈与は無効になるというルールは孫には適用されない』のだから」

と思われるかもしれません。しかし孫が生命保険を受け取った場合には話が変わります。というのも相続に際して遺産や生命保険を受け取った人は3年内加算の対象になると決められているからなのです。

したがって孫が生命保険を受け取った場合には、かわいい孫パワーは通用せず、まるっと相続税の対象となり、しかも1.2倍の相続税となり、亡くなる前3年以内に行われた贈与が無効になるという事態が待ち受けているのです。3年内加算について詳しくは「暦年贈与を活用した相続対策が廃止?税制改正前にやっておくこと」の記事に書いています。

よって相続税が発生しそうな財産をおもちの場合には、お孫さんには不動産などの別の方法で財産を残してあげる方が賢明です。不動産についてはこちらでご相談に乗れます。もし生命保険金の受取人を孫に設定しているのであれば子供に変更しておいたほうが良いかもしれません。相続発生した後は、受取人の変更ができず大勢の方が泣きをみているからです。本当に大勢いらっしゃいます。

まとめ

生命保険金は単なるお金ではありません。子孫が末永く安心して暮らせるようにという次代への愛です。納税は義務ではありますが、できるだけ子孫にお金を残してあげたいというのも人情でしょう。

生命保険金を活用した節税を行うに当たっては、保険会社や銀行の営業さんの言いなりになるのではなく、きちんと知識をもった税と法律の専門家に相談した上で賢い選択をしていくことが大切です

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