不動産

【仲介ストーリー】命を繋ぐ物件のはなし【日野市多摩平事務所賃貸】

Contents

クライアントについて

クライアントは冠状動脈用の医療機器を開発する技術系スタートアップ企業様でした。主に冠状動脈疾患(CAD)の治療用のイメージングカテーテルとシステムの設計と開発を行っておられるそうです。

事業の拡大に伴い、研究開発拠点も移転することをお考えになられていたものの、1年ほどかけても理想の物件と巡り合えなかったとのことです。ご縁合ってその旨をご相談を受け、弊社で受任させていただくことになりました。

ご希望の条件

ご希望の条件は、

〇その当時事務所があった武蔵野市より西で、中央線沿線、できれば八王子、豊田、日野といった辺りで、従業員様の通勤を考えて駅から徒歩15分圏内であること

〇150平米~

〇そしてお家賃

というものでした。「そんな物件たくさんありそう?」そう思うかもしれません。ところがそううまくはいきません。だいたい皆同じような条件で探しています。そして良い物件であればあるほど空くことはほとんどありません。非常に競争が激しいのです。そして物件自体はあってもそこに関わる「人」と上手くいくとは限りません。そこが難しいところなのです。

理想の物件と出会うまで

私どもで、条件に近い中で、現在借主を募集している物件約300件の精査を行いました。地域の不動産会社を全て回って、情報を集めては精査、集めては精査の繰り返しです。

しかし実際にクライアントにご紹介できそうな物件は10件程度となりました。外した290件は何かというと、医療機器の研究開発に適した土地柄ではなかった、他の入居者の質が良くなかった、オーナー及び管理会社に問題があった、建物の管理状態が良くない等々の理由です。

そのように精査した10件の中から、一番良い物件をご提案し、ご内見いただきました。

しかし…そううまくはいきません

書類で判明している条件面では完璧であったとしても、現地をみるとイメージとは異なる部分に気づきます。例えばクライアントに最初にご覧いただいた物件は、1階に所在しているものの、実際は階段を下りなければ1階にたどり着けない設計でした。人間だけならばなんとでもなるのですが、医療用の精密機器を取り扱う関係上、段差の数段が大きな障害だったわけです。

また次にご覧いただいた物件は、元診療所で、非常に使いやすい間取りではありました。段差もありません。しかし電気が他のテナントと共用になっており、電気代を他のテナントと按分するという形でした。他のテナント様は電力を消費するテナント様、一方でクライアントはそれほど電力を消費しない事務所です。かつ既存のテナント様の電気代がかなりの多額であるということが分かり残念ながら見送ることとなりました。

さらに、次にご覧いただいた物件は、八王子駅近くにある一棟ものの貸事務所でした。1階の段差はなく、電気も他のテナントと按分する必要もありません。またオーナー様はきれいに内装をリノベーションしておいででした。大変良い物件だったのですが、間取りが完成され過ぎていてクライアントがイメージする使い方が出来ないことと、きれいに完成しているために原状回復に費用がかかりそうだということで悩まれることとなりました。

やっと出会った物件

クライアントと共に1ヶ月かけて市場の物件を全て見終わった時、医療系の物件を取り扱っている友人から物件の情報が寄せられました。たまたま条件に合いそうな物件が2つ出てきたとのこと。一つは大きな病院の近くにある薬局跡、もう一つは11,000人の赤ちゃんを取り上げた地域一番の産婦人科医院跡でした。早速、精査を行ったところ、どちらも全ての条件を満たしていそうでした。そこでクライアントへご提案することにしたのです。

クライアントが気に入ってくださったのは、後者の産婦人科医院跡でした。ご希望の地域で、ご希望の賃料で、希望の倍の床面積でした。早速内見を申し込んだところ、オーナー様及び管理会社様が非常に優しくてしっかりしており、物件に対してもとても愛情をもって接しておられることが分かりました。もちろん電気代按分ではありません。しかし一階に入るためには1段、10センチほどの段差があります。これについてはステップを置くことで対応ができそうだということで問題なし。それより何よりオーナー及び管理会社とクライアントとの相性が良さそうというのが一番の印象でした。

オーナー自身も地域の名医として長年やってこられたわけですが、やはり独立してその場所に開業したときは大変苦労されたとのこと。しかし奥様が「あなたなら絶対大丈夫!絶対にうまくいく」と励まし続けてくれたおかげで弱気を断ち切り、奥様の考案した建物のデザインとインテリア、そして先生の考えた最も命の安全を考えた間取りが力(もちろん先生の知識と技術も)を発揮し始め、半年後にボチボチと患者さんが増え始め、3年後にはお断りをしなければならないほどの人気になりという歴史を刻んでこられたそうです。私の身の周りの方も大勢こちらの病院でお子様が産まれていらっしゃいました。

しかし長年連れ添った奥様が亡くなられ、それに伴って閉院することを決められたとのこと。11,000人の赤ちゃんを取り上げたこと、母体の死が一例もなかったことが、お二人と本物件の誇りとのことでした。

同じように独立し、医療機器の開発を通して大勢の命を救わんとするクライアントにとってはこれほど素晴らしいご縁はありません。クライアントは本物件のストーリーを継いでいく決意をされたのです。

その後

その後順調に賃貸借契約は進行し、この春、物件の内部を若干手直しして、クライアントの新事務所が開業することとなりました。弊社からもお花を出させていただきました。

不動産はドラマの舞台というのが私どもの信念です。単なる土地建物ではなく、不動産を介して繋がる人と人のご縁、繋がる歴史を見ることができるのがこの仕事の最も楽しいところです。それを改めて思い起こさせる取引でした。

-不動産
-, ,