知り合いのおじさんとおばさんはとても仲が良くて、おうちも夫婦で共有してるんだって
ホホゥ、そうなんだ
でも、最近おじさんが病気になっちゃって、おじさんに万一があったら家はどうなるんだろうっておばさんがとても心配してたよ
たしかにそれはとても心配だね。では今日は夫婦共有名義になっている不動産が万一の時どうなるか、そして大切なおうちを守る方法についてみていこうね
Contents
夫婦共有名義の不動産があるときに片方が死亡して相続が発生した時の流れ
夫婦共有名義の不動産に相続が発生した場合、特に遺言などがないのであれば、法定相続人、つまり配偶者と子供たち、子供たちがいないのであれば配偶者と亡くなった方の親、子供たちも親もいないのであれば配偶者と亡くなった方の兄弟が、亡くなられた方のもっていた共有持分を相続することになります。
もちろん配偶者以外の相続人がいないのであれば、配偶者がすべて相続することになります。
相続人が配偶者のみであれば単純なのですが、相続人が複数いる場合には、後々トラブルの種となることが多いものです。
ですから傷心の中で大変ではありますが、法に則ってきちんと整理しておくことが大切です。
そのやり方は具体的には以下のような流れになります。
手順1 相続人を全て洗い出す
第1順位 | 被相続人の子供(子供が死亡している場合は孫) | 2分の1 |
第2順位 | 被相続人の直系尊属(両親。両親が死亡している場合は祖父母) | 3分の1 |
第3順位 | 被相続人の兄弟姉妹 | 4分の1 |
相続が発生した場合、配偶者は常に相続人です。配偶者の相続分は2分の1です。そして被相続人(亡くなった方)に子供がいる場合には、子供たち(子供たちが亡くなった場合には孫)が、第1順位の相続人となります。第1順位の相続分は2分の1となります。
第1順位の相続人がいない場合には、第2順位の相続人が相続する権利をもちます。第2順位の相続人とは、亡くなった方の親(親がいない場合には祖父母)のことです。この場合、配偶者の相続分は3分の2、第2順位の相続分は3分の1となります。
第2順位の相続人がいない場合には、第3順位の相続人が相続する権利をもちます。第3順位の相続人とは、亡くなった方のご兄弟や姉妹となります。この場合、配偶者の相続分は4分の3、第3順位の相続分は4分の1となります。
手順2 遺言書がないか確認する
被相続人が遺言書を残していれば、その意思が尊重されることとなります。
例えば「不動産の自分の持ち分は全て配偶者である〇〇に譲るものとする」と記載されていれば、その意思が尊重されて、不動産は全て配偶者の所有となるわけです。
手順3 遺産分割協議を行う
遺言書が存在しない場合、または遺言書は存在するものの、その内容に相続人全員が反対の場合は遺産分割協議が行われます。
遺産分割協議とは相続人が全員で集まり、相続財産をどのように分けるか話し合う場です。
ここで相続人全員が合意すれば、遺言や法定相続分とは違う配分で相続を実行することができます。
遺産分割協議を行う場合には、遺産分割協議書を作成する必要があります。この遺産の分け方で合意したという証拠ですね。
なお遺産をなるべく多くゲットしようと奮闘するのは分かりますが、権利には義務も伴うことを忘れてはなりません。多く相続するということはその対価として多く義務を果たさなければならないということです。
遺産分割協議については別記事で詳しくご紹介する予定です。
手順4 登記名義の変更手続きを行う
相続財産の分け前が決まったら「どのように分けました」と、登記する必要があります。第三者への対抗要件を備えて大切な財産を守るためです。
また、相続後の登記は令和6年4月1日以降、義務となります。
なぜこれが義務になったかというと、相続登記をしないまま、また相続が発生したりして、誰が持ち主か分からず、周りの方が大変な迷惑を被っているからです。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
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相続登記は必要な書類を揃え、かつ正しく申請しなければなりませんので、二度手間三度手間を防ぐためにも、司法書士にお願いすることが一般的です。
手順5 税務署に申告する
相続財産の相続人は、相続が発生したことを知った日の翌日から10か月以内に、相続税の申告と納税を行わなければなりません。
この期限までに遺産分割協議が調わない場合は、法定相続分に従って相続したものとして、一旦、納税と申告を行っておくことになります。
そして遺産分割協議が調ってから実際の相続分通りに修正申告(相続税の追加納付のための手続き)や更正の請求(相続税の還付を求めるための訂正)を行っていきます。
夫婦共有名義で片方が死亡した時は誰の名義になるか
ここまで見てきてお分かりのように、不動産が夫婦共有名義の時に片方が死亡したとしても、必ず持分が配偶者のものになるわけではないということが分かりました。
もし配偶者以外にも相続人がいるのならば、その相続人も亡くなられた方がもっていた共有持分を相続する権利があるのです。
~配偶者のみが相続人である場合~
相続人が配偶者のみであれば、配偶者が持分を全て取得することになります。不動産は配偶者の単独名義になるということですね。
共有名義ではないので、不動産を売買したり、賃貸したり、リフォーム等も自由に行うことができるようになります。
~配偶者以外にも相続人がいる場合~
配偶者以外にも相続人がいる場合、不動産の持ち分は次のようになります。
第1順位 | 被相続人の子供(子供が死亡している場合は孫) | 2分の1 |
第2順位 | 被相続人の直系尊属(両親。両親が死亡している場合は祖父母) | 3分の1 |
第3順位 | 被相続人の兄弟姉妹 | 4分の1 |
法定相続人が法定相続分に応じて、不動産を所有するパターン
法定相続分とは民法に定められた遺産分割の目安となります。上の表がそれです。
相続人が遺言等で意思を表明せずに亡くなった場合には、法定相続分を採用することが多くあります。
それは無用なもめ事を防ぐための国の配慮でもあります。
したがって遺言がある場合や、遺産分割協議の話し合いによって、もめずに相続財産を分けることができるのであれば、法定相続分を採用する必要はありません。
遺言に定められた相続分に応じて、不動産を所有するパターン
亡くなられた方が遺言書を準備していた場合、ここで指定された人物が不動産を相続することになります。
指定されるのは配偶者とは限りません。
子供や孫、親兄弟が相続人として指定される可能性もありますし、生前自分に尽くしてくれた第三者の可能性もあります。
それは亡くなられた方の財産の行く末は、その亡くなられた方の生きてきた証だから、その意思を最大限に尊重すべきだよねという考え方から来ています。
遺産分割協議で決めた相続分に応じて、不動産を所有するパターン
遺産分割協議とは、相続人が全員参加して、全員で合意して、誰にどれだけ相続するかを話し合いで自由に決めることです。
遺言があったとしても相続人全員が反対した場合には、この遺産分割協議にもつれ込むことになります。
そしてこのパターンを選択する際には、相続人全員の参加と合意を証明する遺産分割協議書がなければ無効となります。
「全員の合意となると、容易ではなさそうだぞ…」と思われるかもしれませんね。
いずれにしても上記①~③のどのパターンであっても、不動産は配偶者とその他の人の共有となる可能性があります。
夫婦以外で不動産を共有すべきではない理由
いうまでもないかもしれませんが、不動産の共有はおススメできません。
なぜなら、不動産への思い入れは各共有者ごとに異なり、それぞれの経済的事情や考え方の違いから、不動産の扱い方や処分方法を巡って骨肉の争いになることがとても多いからです。
実は、共有の不動産は不動産の管理行為を自由に行うことができません。民法で次のように定められているからです。
「共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。」(民法第252条)
不動産の管理行為とは「財産の性質を変えない範囲内の利用または改良」のことをいいます。例えば、マンションの一室を賃貸に出すのは「利用」です。またこのマンションの一室をリフォームするのは「改良」です。
そして、これら「利用」や「改良」を行うには「過半数の同意」が必要になるということです。
実際に、相続した共有名義の家やマンションを貸し出すことはよくあることです。
しかしその手続きには様々な場面があります。例えば、賃貸借の契約を締結したり、解除したり、賃料変更したり、賃借権の譲渡を承諾したり、解除した後の明渡請求を行ったりといったことです。
そしてその各段階で共有持分の過半数の同意が必要だったりするわけです。夫婦で共有であれば意思の一致をみることは比較的容易なのですが、共有者が増えるにつれて、そして共有者との距離感が離れるにつれて、共有は争いの母となりがちです。
突然必要になった大規模修繕の負担金を誰が負担するかでもめる、親の面倒も不動産の面倒もみない(みれない)のに入ってくる家賃は折半であることに不満、俺はしてやったのに、私はしてもらってないのに…etc
それぞれの立場でそれぞれの思いがあるものです。
仲良くしたいのは山々なのですが、そうもいかないのが現実です。したがってそういったもめ事の種は作らない。あるいは早期に解消しておくことが大切です。
また、夫婦で不動産を共有していても、離婚する際には権利関係をきちんと整理して共有状態を解消しておく方が良いでしょう。
その場合についてはこちらの記事が参考になります。
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自分の共有持分だけを売ることができます
上でみたように共有不動産の管理行為を自由に行うことはできません。そして共有不動産全体を自由に売却することはできません。しかし共有不動産の自分の持ち分は自由に売却することができます。
もちろん、持分だけを買う人も「共有不動産は自由に管理行為を行うことができない」ということは分かっているわけですから、自由が制限される分、低い価格で取引されることが多くなります。
また上述のように法律面の知識もある程度必要ですから、基本的には既にその不動産の持ち分をもっている他の共有者か、共有持分の買い取りに長けた宅建業者にしか売ることができないと思っておいてください。
このように共有状態の不動産は、市場性もある程度制限されることでしょう。
しかし長期にわたるトラブルの種を無くしてしまえるということで、共有持分だけを売却したいというご相談は最近増えています。
ちなみに、場合によっては他の共有者と口も利きたくないという場合もあるかもしれません。
このような場合でも不動産の共有持分を第三者に売却するに当たって、自分の持ち分を売却することを他の共有者に伝える義務はありません。
住宅ローンはどうなるか
夫婦共有名義で不動産を取得する際に住宅ローンを利用している場合も多いことと思います。
この場合に相続が発生すると、相続人は相続財産だけでなく住宅ローンなどの債務も相続することになります。
つまり夫婦共有名義の不動産を配偶者のみが相続するという場合には、亡くなった配偶者の住宅ローンまで支払う必要があります。
しかし団体信用保険に加入していれば、配偶者(債務者)が途中で亡くなっても残債を0にして相続することができます。
住宅ローンについては詳しく別の記事でご紹介します。
トラブル防止のためにやっておくべきこと
さて、ここまでで不動産が夫婦共有名義になっている時に片方が死亡して相続が発生したらどうなるかをみてきました。
万一のことが起こってしまうと、どうしても不動産の持ち分を巡って、トラブルや手続きで面倒な事態に巻き込まれかねません。したがって、可能ならば相続が発生する前に手段を講じたいところです。 トラブル防止のために考えられる手段としては次のようなものが挙げられます。
遺言書を作って不動産は配偶者に相続すると書いておく
不動産を夫婦共有名義にする場合には必ず、お互いに遺言を作成しましょう。
上で学んできたように、そもそも何の策も講じていないところに相続が発生するからトラブルの原因になるのです。
ですから最初から、お互いに万一があった際には、自分の不動産の持ち分は全て配偶者が相続するという遺言書を準備しておけば良いのです。
もちろん、相続人全員が遺言の内容に反対した場合には、改めて協議する必要がでてくるわけですが、配偶者である自分自身がその遺言に反対することはないでしょうから、遺言通りに不動産は全て自分が相続することになるはずです。
なお、法定相続人には遺留分が存在することはお忘れなく。
法的に有効な遺言書の書き方については別記事でご紹介します。
生前贈与を行って不動産をどちらか一方の名義にしておく
不動産について生前贈与を行って、共有ではなく配偶者のどちらかの単独名義にしておく方法もあります。
しかしこの方法では、贈与税や不動産取得税を支払う必要があること。また万一、贈与された側が先に亡くなった場合に、結局その相続分を巡ってトラブルが待ち受けていること等のデメリットもあります。
したがって、実行の仕方とタイミングが難しいといえます。必ず税理士や弁護士等の専門家に相談の上で実行しましょう。
また生前贈与については次の記事も参考になります。
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まとめ
不動産が夫婦共有名義になっている時に片方が死亡した場合、相続人が配偶者の他にいるかどうかが大きなカギとなります。
将来、万一の際に他の人と共有したくないのであれば、遺言書の作成や生前贈与を行っておきましょう。
特に遺言書は、夫婦共有名義で不動産を取得する際に必須のものであると覚えておくと良いでしょう。お互いに作成しておきましょう。
このようにして万一の際に配偶者が全ての持分を相続しておけば、不動産は単独名義となり処分も利活用もしやすくなります。
とはいえ住宅ローンなどの負担が大きいために、相続すること自体が難しい場合もあることでしょう。
その場合には自分の共有持分を売却して共有関係から抜ける方法もあることを覚えておきましょう。自分の持ち分は自由に売却できます。
ネリーとハリーの知り合いのおじさんとおばさんはどうなったかな?
うん、おじさんの手術はうまくいって、順調に回復してるんだって
それは本当によかったね!
それに、これを良い機会と考えて、お互いに自分に万一があった時には、今住んでいるお家が単独名義になるように遺言を書いたんだってさ
ホー。それが一番だよ。これからも仲良く一緒に不動産を大切に守っていってほしいね